今、巷では「中古」が注目を浴びている。これまで新品、すなわち規格品を大量消費する文化は、大量生産を前提としていた。だが過剰な生産と浪費、それらが引き起こす環境破壊などが大きな問題となった。そうした反省から起こった文化が「シェアリング・エコノミー(共有型経済)」だ。

「所有しない」「捨てない」「共有する」「対話する」などの特徴があるという。結果として無駄も減る。「流行の新品でないと」といった呪縛もない。そんな時代の空気と「中古ビジネス」は、非常にマッチする。

 消費者は、モノの風合いやぬくもりが伝わるような個人間の関係、「きずな消費」を求める。加えて、個人間の取引には原則、消費税がかからないという背景も、こうした流れに拍車をかけている。

 また第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストは、

「少子高齢化によって、主に男手が担ってきた建設需要が減るといった『男性不況』に陥るなか、購買力が奪われた消費者は中古を有効活用して生活水準を維持しようとしている」

 とも指摘する。

 シェアリング・エコノミーをよく体現しているのが「古民家」かもしれない。千葉県に住むジャーナリストの柳原三佳さんは今年3月、自宅の裏庭に築150年の古民家を移築・再生した。近くの山武市で解体された秘蔵品の長屋門。書道の稽古先での雑談がきっかけで偶然たどりついた掘り出し物が、世の中に同じものが二つとない古民家だった。総工費は約1400万円。オールドカー雑誌の編集長をしている夫ともども、「古くていいものは何でも手入れして使う」がモットーだ。

「失われかけた木造文化を次世代に引き継ぐ醍醐味がある」

 と柳原さん。関東大震災にも耐えた建物だが、基礎工事は入念にした。ご近所からも「古民家公民館」として愛され、憩いの場として活躍している。

 刻まれた時間が醸し出す落ち着いた空間は、古民家ならではの贅沢といえるだろう。

AERA 2012年11月26日号