01年に施行されたDV防止法は、「夫婦げんか」と見られがちだった配偶者による暴力を法の力で禁止した。04年と08年に改正・強化され、身体的暴力に加え、精神的暴力と性的暴力も防止対象に含まれた。精神的暴力には、人間性を否定する言動や携帯電話や郵便物を勝手にチェックすることも含まれる。
昨年、全国の警察が扱ったDV事案は過去最多の3万4329件で、02年と比べて約2.4倍になる。DVへの関心の高まりは、本当のDV被害者を救う一方、「冤罪」を増加させる恐れもはらむ。とくにDVといえば「男性が女性に暴力を振るうもの」という固定観念が定着しているため、妻が離婚を有利に進めるために意図的に悪用するケースが後を絶たない。
DV冤罪を追うジャーナリストの津田哲也氏は、DV冤罪を生みだす構図をこう語る。
「痴漢と同じで、DVも絶対的に深刻な被害者のほうが多い。DVは凶悪事件に発展する恐れがあるため、警察は妻側がDVを申し立てれば、加害者とされた夫の主張を聞き入れようとしない。こうした風潮もあり被害届を出しやすくなった」
なかでも母親が子どもを連れて別居した後、虚偽のDVや、些細なトラブルをDVと主張して、子どもを父親に会わせないケースが多い。先進国で唯一、離婚後も元夫婦が共同で子育てにあたる共同親権制をとっていない日本では、親権争いになった際、子どもと一緒にいる親のほうが有利になるからだ。
しかも、虚偽のDV申立人への罰則は10万円以下の罰金が科せられるだけ。ウソがばれても、訴えた側は親権を持てる。DV冤罪の多くは計画的に仕組まれる、と津田氏は指摘する。
「知恵を授けるのは弁護士。離婚の調停や訴訟で『DV被害』を主張させれば、依頼者に有利になり、和解や勝訴を勝ち取れ、成功報酬を稼げる。実際、連れ去りを奨励する弁護士もいる」
※AERA 2012年11月5日号