行方不明者が少なくとも8人、遺体も次々と見つかっている。複雑怪奇な事件の「主役」と推測される64歳の女とは、一体、どんな人物なのか。

「兵庫県尼崎市で育ち、市内の中学校に通っていた」といわれる角田(すみだ)美代子被告(監禁、傷害致死罪などで起訴)だが、その後の素性は謎に包まれている。

 住まいは、2000年に購入した尼崎市内の8階建てのマンションの最上階だった。このマンションが一連の事件でどのような舞台となったのかはまだわからないが、ここを拠点に暴れまわっていたのは間違いないらしい。

 近所では「クレーマー」としても有名だったらしい。

 自宅に宅配便が届けられて「(中身が)解けとった」と弁償させていた、スーパーでは、買った商品に「腐っとる」などと因縁をつけていたなどという話はいくつもある。事件の舞台の一つとなった香川県では、うどん店で「ハエが入っていた」「店潰したろうか」などと男たちを引き連れて脅し、10万円を脅しとった、という報道もある。

 一方で、「優しくて世話好きのオバチャンという面もあった」とも言われている。平和だった4家庭に侵入する際も、「優しさ」で取り入っていた。

 その典型例のひとりが、犯行に巻き込まれたとされる元電鉄社員(42)だろう。夢だった「喫茶店経営」について、「応援したる」と優しく食事に誘われ人生のアドバイスを受けたりした。「会社への不満もよく聞いてくれた」と、言われるままに退社したが、援助どころか逆に900万の退職金の一部を渡したという。それでも彼は、「お世話になったから逆らえない」と裁判でも証言している。

AERA 2012年10月29日号