平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
この記事の写真をすべて見る
萩野公介(左)ら高地合宿参加メンバー (撮影/平井伯昌)
萩野公介(左)ら高地合宿参加メンバー (撮影/平井伯昌)

 指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第10回は「選手の食事」について。

【萩野公介選手ら高地合宿参加メンバーの写真はこちら】

*  *  *

 2月21日に日本を発ってスペインで高地合宿に入りました。シエラネバダ山脈の標高2300メートルのスキーリゾートにある国立トレーニング施設は、北島康介がアジア大会で初めて世界新を出した2002年から利用しています。

 近くにコンビニなどもなく、食事は施設内のレストランでとります。基本的に現地で出されたものをしっかり食べる。ただ、日本人のソウルフードである米だけは炊くように頼んで、朝昼晩でなるべく2回は食べるようにしています。補食で、選手たちが当番制で作るおにぎりも食べています。

 トップアスリートの合宿ではエネルギーと必要な栄養素をとるために、デザートまで何でも食べろと言います。激しい練習が続き、高地はエネルギーの消費量が多いので、しっかり食べないと体重が減ってしまうのです。食が進まないときは「食べるのも練習だぞ」と言うこともあります。

 ここのメニューは肉と魚がチョイスできます。シェフが腕をふるっておいしいのですが、日本の食事と違って見た目が今いちのときがあります。食べず嫌いの選手がいるので、まずは私が食べて、「今日は魚がいいぞ」「このスープ、最高だ!」などと言っています。

 オフの日、グラナダの町に下りて外食をするときがあります。地元の店でみんなで食べる食事は楽しみの一つです。こんなときも私が率先して新しいメニューに挑戦します。豚の太ももの骨付き肉に女子選手が尻込みしたときは、「このコラーゲンが美容にもいいんだぞ」とすすめました。

 若いころの北島はたくさん食べられない方で、なんでも食べるように仕向けていました。ジュニア合宿で豪州のタスマニアに行ったとき、カキはだめなんですと言うので、「うまいのを食べたことがないからだ。ここのは新鮮でうまいぞ」と一緒に食べたら、それ以来、カキが大好きになったということがあります。

次のページ