また、軽症者への検査をしないという方針だと、若者など軽症者が外でウイルスをまき散らすことで、お年寄り、基礎疾患のある方、妊婦などの弱者がその犠牲になる恐れが高まる。それを避けるためにも早期検査により軽症段階で感染者を特定し自宅待機を求めることが必要だ。今回の方針は、弱者切り捨て宣言でもある。

 厚生労働省は何とか検査の数を減らしたいと考えているようだ。同省は、2月26日現在、クルーズ船とチャーター便と一部の地方機関の分を除き、1061件の検査を行い、うち149件が陽性だったとホームページで公表した。お隣韓国では、同25日までに1日7500件以上の検査態勢になっていて、累計4万件強の検査で977人が陽性だった。比例計算では、もし日本で4万件以上の検査を行えば、5千人以上の感染者が出てもおかしくない。

 感染者が激増しても、検査しなければ、統計上の感染者数は増えない。感染がわからないまま死亡しても、新型コロナウイルスによる死者の数も増えないから、五輪開催などには好都合なのだろう。

 安倍政権の「医療崩壊予告」と「医療弱者切り捨て宣言」を黙って見過ごすわけにはいかない。

週刊朝日  2020年3月13日号

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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