古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など
古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など
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新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で2月26日、発言する安倍晋三首相(左端)
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で2月26日、発言する安倍晋三首相(左端)

 2月25日、政府は新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を発表したが、そこに非常に心配なことが書いてある。それは、国内での感染状況の把握についての将来の方針転換である。

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 現在は、PCR検査(ウイルス感染の有無を判断する遺伝子検査)は、様々な要因を勘案して医師が必要と認める場合に実施することになっている。ただし、実際の現場では、4日前から咳が続き、ようやく熱が38度に上がった妊婦が検査を拒否されたとか医師が必要だと言っても検査できないなど理不尽な例が多発し、国民の間には不満と不安が高まりつつある状況だ。

 しかし、今回の基本方針は、さらに不安を増幅する内容になっている。今後、「入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査に移行」する可能性を予告したのだ。わかりやすく言えば、熱があってもダメ、苦しくてもダメで、肺炎で入院が必要だという状況になって初めて検査が認められるという意味になる。

 いつそうなるのかというと、「地域で患者数が継続的に増えている状況では」と書いてある。今後は、各地域で患者数は継続的に増加していく確率が非常に高いと誰もが思っている。ということは、「肺炎になって入院」という危機に陥るまで検査ができない事態になるのはほぼ確実だと考えたほうが良い。

 感染したとわかってもまだ特効薬はないからたいしたことはできない、だから早めに検査しても仕方ないと思っている人もいるが、これは完全な間違いだ。なぜなら、エイズ用などの既存の抗ウイルス薬に効果があることが判明していて、重症化しやすい患者などには、発症したら必要なタイミングですぐにこうした薬を投与すれば死に至る危険を軽減できる。逆に、肺炎で重症化してから検査をするのでは、対応が遅れて一命を落とすことになる確率が高まる。早期治療には早期診断が必須、早期診断には早期検査が必要というのは誰にもわかることだ。それができないということは、常識的に考えれば、必要な検査ができず、重症化して死に至るリスクを避けられないということだから、政府がまさに医療崩壊の予告を行ったと言っても良いだろう。

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