
オランダのビッグ・バンド、結成12年目の新作
Riffs'N Rhythms / Jazz Orchestra Of The Concertgebouw
ヨーロッパにはそれぞれの国を代表する優れたビッグ・バンドが存在し、レベルの高いシーンを形成していることが、我が国でも知られるようになってきた。オランダといえばメトロポール・オーケストラが筆頭格の老舗だが、今回ご紹介するのは結成12年のビッグ・バンドである。
作・編曲家/指揮者のヘンク・ムトヘールトが96年に立ち上げたバンドが母体となり、99年にオランダが誇るアムステルダムのコンサート・ホールからお墨付きを得て、ジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウ(JOC)としてスタート。本作はその第3弾だ。
JOCは新世代が中心の18人編成で、メンバーまたはゲスト・ミュージシャンが作曲した、ムトヘールトのアレンジによる楽曲を主なレパートリーとしているのがバンド運営のポリシー。今回は大半の作曲と全編曲をリーダーが手がけており、ムトヘールトのカラーが全面に出た形だ。
その書法はモダン・ビッグ・バンドの王道を踏襲した《リフ&リズム》、オリエンタルな香りが漂う《チャイニーズ・ダンス》、マイルス・デイヴィス&ギル・エヴァンスのスパニッシュ・プロジェクトを想起させる《エスペス》、サド=メル楽団の遺産を継承した《ナチョズ・ナーヴ》と、ビッグ・バンド・ファンを刺激して止まないもの。
ジェシ・ヴァン・ルーラーとピーター・ビーツを除けば、日本で知名度のあるミュージシャンはほとんどいない中、アルト&ソプラノ・サックスのヨルク・カーイやトランペットのヤン・ヴァン・ダウケレンといった腕利きを発見できる楽しみもある。
そして、アルバムは最後に大きな聴き物を用意していた。《ブラザーズ》はアップテンポのスインギーなナンバー。メンバーの軽快なソロ・リレーを経て、バラードへと変化。さらに終盤近くに進むとヴァン・ルーラーのギター・ソロを合図に場面が転換し、まったく新しい曲が始まる。
《イ―ジー・トゥ・ラヴ》をアダプトしたような曲調は訴求力大であり、1粒で2度も3度も美味しい楽曲にムトヘールトのセンスを感じずにはいられない。アムステルダムの名門「ビムハウス」でのライヴ。10月には彼らの初来日公演が控えている。
【収録曲一覧】
1. Riffs & Rhythms
2. Tusks & Trunks
3. Bird’s Eye
4. Chinese Dance
5. Espece
6. Somewhere Between The Stars
7. Nacho’s Nerve
8. Slow Walk
9. Brothers
ジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウ:Jazz Orchestra Of The Concertgebouw (allmusic.comへリンクします)
ヘンク・ムトヘールト:Henk Meutgeert(cond,arr)
ジェシ・ヴァン・ルーラー:Jesse Van Ruller(g)
ピーター・ビーツ:Peter Beets(p)
マタイン・ヴィンク:Martijn Vink(ds)
ほか
2007年5月アムステルダム録音