私大も、最近の安全志向の影響が出ている。私大医学部最難関の慶應義塾大は前年比で91%と大きく減少。近年の志願者数は減少傾向で、15年と比較すると約20%も志願者が減った。同大の医学部は東大や京大など旧帝大の医学部との併願が多かったが、安全志向から敬遠されているようだ。
首都圏や関西圏の大学でも減少が目立つ。東海大医学部(神奈川県)も今年は、一般方式が前年比73・8%と大きく減少。昭和大(東京都)も一般方式は前年比74・1%だ。関西圏では近畿大(大阪府)の一般方式が95・4%、兵庫医科大(兵庫県)が前年比91・2%にとどまっている。河合塾の岩瀬チーフは「都市部では企業への就職の選択肢が多く、医学部の志願者が減っている」と見る。
入試差別問題の影響を引きずる大学も目立つ。問題の発端となった東京医科大は一般方式、センター方式ともに前年比約200%で、大きく志願者を伸ばしたように見えるが、これは昨年、不正入試の影響で志願者数を大きく減らしたため。問題が発覚する前の18年の志願者数と比較すると、65%の水準にとどまる。
第三者委員会から不正を指摘された聖マリアンナ医科大も、今年は前年比124%と大きく増加。こちらも昨年、大きく志願者を減らした揺り戻しがあった形で、18年と比較すると70%弱にとどまっている。ある医学部進学塾の経営者は憤る。
「聖マリアンナ医大が第三者委員会の報告書を公開したのは1月17日。この時期は一部の医学部では入試が始まっており、すでに出願を済ませている人が大半です。報告書の日付は12月12日で、タイミングを見計らっていたんでしょう。不適切な入試も認めず、その姿勢は不誠実に映りますね」
医学部卒業生の親族を不当に優遇し、入学させていたことを認めた日大は、今年A方式が前年比89・6%と下げ止まらない。
信頼回復にはまだ時間がかかりそうだが、志の高い学生が一人でも多く合格することを願いたい。
(本誌・吉崎洋夫)
※週刊朝日2020年2月21日号