ポンちゃんが東京の郊外、今はもうない西荻窪のコニッツという店でポエトリーリーディングを開いた夜には、クボジャーがサプライズで駆け付けてラップ調のリーディングを披露、ジャズバーがソウルバーに様変わりし、喝采の渦になった。
冒頭に触れたクボジャーのライブ“Beautiful People”に伺ったのは年明けのことだった。ニューヨークのアポロシアターかビーコンシアターかと思うほどステージも客席も熱くグルーヴィに盛り上がったかと思うと、とろけるように甘く、やるせない極上のプレイリストに酔いしれた。そこかしこにソウルミュージックの先達たちへのリスペクトもあり、そうしたライブはクボジャーならではのものだった。
ライブ終了後、NHKホールの楽屋を訪ねるとフリューゲルホルン奏者のTOKUがいて、「久保田利伸さんはどこまでも本物なんです。本物を観たい。それでいつも通っているんです」と微笑んだ。ミュージシャンが憧れるミュージシャン。みんなで久保田利伸と同時代に生きていられる幸せを噛みしめた冬の一夜だった。
※週刊朝日 2020年2月21日号