黒川弘務・東京高検検事長 (c)朝日新聞社
黒川弘務・東京高検検事長 (c)朝日新聞社
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 安倍政権が東京高検検事長の黒川弘務氏の定年延長を閣議決定し、永田町、霞が関がザワついている。黒川氏は2月8日の誕生日で63歳になり、定年退官する予定だったが、半年間、定年を延長すると突如、閣議決定したのだ。

「2月5日に検察庁内で黒川氏の送別会をやることが決まっていた。こんなひどい人事はちょっとあり得ないでしょう」(現職検事)

 自民党ベテラン議員が明かす。

「半年後に現在の検事総長、稲田伸夫氏を定年前に退任させ、その後任に黒田氏を推すつもりだろう。こんな大技は官邸にしかできないが、やりすぎではないか」

 これまで検事総長の人事は形式上、内閣が任命するものの、検察の独立性を重んじ、上申されたものを追認するという不文律があった。その「禁」を官邸が破った目的は何か?

「黒川氏は甘利明氏や小渕優子氏の政治と金問題など政権に大きな影響が出そうな検察事案を穏便に処理し、『官邸のお庭番』と揶揄(やゆ)されている。検察はいま、自民党を離党した衆院議員の秋元司被告のIR事件、河井案里参院議員とその夫で前法相の克行衆院議員の公職選挙法違反事件を抱えている。国会で安倍首相の『桜を見る会』の追及がやまない中、河井夫妻の疑惑も立件となれば、安倍政権の存続にかかわるダメージとなる。息のかかった黒川氏に辞められると困るとなったんでしょう」(前出の議員)

 検察が政治と距離を保たなければいけないのは、当たり前のこと。検察では官邸の人事介入に反発が強まっている。

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