「自分らしく自由に暮らせること」「老化の進行が緩やかで、認知症予防につながること」「家計が赤字になるリスクが回避できて、老後破産に陥らずに済むこと」「地域包括ケアシステムという制度で、国や地方自治体が後押ししてくれること」だ。

「最期まで自宅」のメリットは、家計にも優しいことだ。実は介護施設への入所によって、高齢夫婦の家計への負担が高まる。

 大久保さんは平均的な費用の介護施設に入所した場合と、自宅生活を比較した家計収支を試算した。それによると、介護施設での生活が家計を圧迫する実態が明らかになっている。この試算の前提条件は次のとおりだ。

 夫婦2人ともに現在70歳で夫の死亡年齢が88歳、妻が94歳▽夫婦2人が介護施設へ入所する場合の年齢は夫82~88歳、妻86~94歳(介護施設への入所者が増える要介護2以上になる年齢は、男性82.62歳、女性85.69歳、東京都健康推進プラン21中間評価報告書)▽貯蓄額2389万円(世帯主が70歳以上の世帯平均貯蓄額、平成29年版高齢社会白書)▽年金は月額約22万円(モデル世帯における平成29年度の年金額、厚生労働省)▽夫死亡時の妻の遺族年金約15万円▽生活費月額28万円(「家計の金融行動に関する世論調査(平成29年)」)

 この試算によると、「最期まで自宅」の場合は1021万円の黒字、介護施設入所なら1067万円の赤字で、老後破産となる。主な原因は、夫の介護施設入所で生活費が40万円、その後、妻も入所すると50万円に跳ね上がるからだ。

 大久保さんは「試算はあくまでも目安でしかないが、病気による医療費支出は計上しておらず、現実はもっと厳しいかもしれない。一般論として、最期までわが家で暮らすことが老後破産の最大の防衛策になる」と話す。少しでも長く、自宅で暮らすためにはどうすればいいのか。大久保さんの母は病院で、父は老人ホームで最期を迎えた。「父母も、2人をみとった私も、老いへの心構えや準備が全くできていなかった」(同)

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