新型コロナウイルスへの不安が急速に高まっている。国連の専門機関である世界保健機関(WHO)は1月31日(日本時間)に緊急事態を宣言した。
中国の患者数は1万人を超え、死亡した人は250人を超えた。タイやシンガポール、韓国などアジアに加え、米国やフランス、ドイツなどでも感染者が見つかっている。
世界経済への影響も懸念されている。1月31日の米ニューヨーク株式市場では感染拡大への警戒感から、投資家が株式を手放した。主な株価指標であるダウ工業株平均は前日比603・41ドル(2・09%)安い2万8256・03ドルと、約1カ月ぶりの安値となった。
日本の感染者は1月31日時点で17人に上る。国内で人から人へ二次感染したとみられるケースもあった。症状がない感染者もいて、検査結果が判明するにしたがって、全体の人数はさらに増えそうだ。
政府は流行地の中国湖北省に2週間以内に滞在歴のある外国人らについて、基本的に入国を拒否すると表明した。特定の地域を指定し入国拒否をするのは初めてとされる。感染症法上の指定感染症に指定する政令は、2月1日から施行された。
日本でも不安が高まるなか、流行地である中国湖北省武漢市から、民間のチャーター機で多くの人が帰国している。第1便で1月29日に戻った206人のうち191人の一時滞在先になったのが、勝浦ホテル三日月(千葉県勝浦市)。担当者によると、政府の要請で急いで受け入れを決めたという。
「1月28日に政府から当社グループのトップに直接連絡があったようです。現場では夜通しで準備を進めました。予約が入っていた一般客は別のホテルに振り替えさせてもらった。部屋にはシャワーやトイレがあり、食事は基本的に弁当です。滞在期間は2週間ほどとされていて、約120人のスタッフが対応しています。要請に応じて、できることを精いっぱいやりたい」
民間のホテルとして協力する姿勢には称賛の声が上がっている。一方で、政府の対応のまずさが露呈する場面もあった。ホテルは約170室で全員が一人部屋になるはずだったが、予定を上回る人数となり、20組程度が相部屋になったのだ。このうち2人が新型コロナウイルスに感染していたことも判明し、帰国者には不安が高まった。政府は一部の人を警察大学校(東京都府中市)などに移したという。
これには厚生労働省の1月31日の会見に同席した専門家も、「部屋の中で同席したのはミステイクというか、準備不足だったと思います」と指摘した。