理屈の上だと「タレント島田紳助」は8年前に引退しているため、現在の彼は「元・島田紳助」となります。一方でこの8年間「島田紳助」の値打ちは、「引退後の様子を追う報道」「復帰にまつわる様々な仮説や情報」、さらには「それらを見聞きし発生する世間の感情」などによって変わらず保たれている。歌手や俳優と違い、引退したテレビタレントがこのように実像を伴わない商品価値を現在進行形で生み続けているのは極めて稀有な例です。そして今回のユーチューブ出演において、紳助さんはかなり生産性の高い「発信」をしました。ご自身の経済行為としての出演ではないとはいえ、その「値打ち(影響力や経済効果)」から考えると、これは立派に「プロフェッショナル」の領域でしょう。紳助さんは「元芸能人のプロ」という新しい概念を誕生させたのです。まさに現代ならではの複雑な存在のし方であると同時に、アイドル(人気者)と世間の構造の原点を見た気がします。

 なんてことを考えていたら衝撃的なニュースが飛び込んできました。『楽しんご今年で50歳』らしい。何でも自身のツイッター上で、「現在49歳」「3月で50歳」などと言及(カミングアウト)しているとか。久しく会っていないため彼の現状は把握していませんが、思わず膝を打ちました。確かに「あの人若いよね」と思われたいのならば、いっそ実年齢を上げてしまうのがいちばん手っ取り早い。これなら若作りも痛い絵文字も画像加工も整形も要らない。世の美魔女さんたちも取り入れてみてはいかがでしょうか。今日からあなたも70歳。「努力」や「奇跡」もより際立つはずですし、バレても「70代に憧れていた」と言えば怒られないのでは? 個人で「値打ち」を発信できる時代の新発想。楽しんご、早速ウィキペディアが1970年生まれに改訂されていました。

週刊朝日  2020年1月31日号

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?