日本では正月気分も抜けきれないなか、世界では緊張が高まっている。米軍がイランの重要人物を殺害し、米国とイランの戦争の現実味が増しているのだ。「第三次世界大戦」のような大規模戦争につながりかねないとの懸念もあり、2020年はきな臭い幕開けとなった。
「もしイランが米国の人や施設を攻撃すれば、イランの52の重要施設を直ちに徹底的に攻撃する」
トランプ米大統領は1月4日ツイッターでこう宣言した。空爆する準備は整っているとして、イラン政府に反撃しないよう圧力をかけるためだ。米大統領がツイッターで様々な相手に“脅し”をかけるのはいつものことだが、今回は深刻さが違う。
今回の危機を理解するためには、米国とイランの長年の対立を理解しておく必要がある。1979年にイランの革命指導者ホメイニ師が親欧米だったパーレビ王政を打倒。欧米との関係が一気に悪化するなか、イランの首都・テヘランの米国大使館が過激派に占拠され、大使館員ら52人が1年以上にわたって人質となった。この事件をきっかけに米国とイランは断交し、双方に根深い不信感ができた。その後も、米国とイランはことあるごとに対立し、いまに至っている。
トランプ大統領は今回攻撃するかもしれないとした重要施設数「52」は、人質事件の数を象徴していると説明。40年前の対立の原点がいまにつながっていることがわかる。
40年間にわたって対立し、時には正規軍同士の局地的な戦闘もあったが、全面衝突は双方とも避けてきた。イランは人口8千万人超で、兵員数は予備役も含めれば100万人を超えるとされ、中東でも有数の軍事力を誇る。最新鋭の武器をそろえる米軍は空軍や海軍力で圧倒的に優位だが、地上戦ともなれば大きな被害が予想されるためだ。
そのため正規軍同士の衝突はできるだけしないようにし、双方がそれぞれ支援する軍事組織が、イラクやシリアなどのイラン国外で戦ってきた。
ところが今回は、トランプ大統領が空爆準備を宣言したように、全面衝突の危険性が高まっている。発端は、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)を殺害したこと。日本での知名度は低い人物が、イランでは国民的な英雄だ。最高指導者のハメネイ師の側近ともされ、その存在感は大きかった。