テヘランで反米スローガンを叫ぶ市民ら=1月3日 (c)朝日新聞社
テヘランで反米スローガンを叫ぶ市民ら=1月3日 (c)朝日新聞社
イランへの空爆準備を宣言するなど対決姿勢をアピールしているトランプ米大統領 (c)朝日新聞社
イランへの空爆準備を宣言するなど対決姿勢をアピールしているトランプ米大統領 (c)朝日新聞社
米軍に殺害されたイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官の肖像を持つ子ども=テヘラン (c)朝日新聞社 
米軍に殺害されたイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官の肖像を持つ子ども=テヘラン (c)朝日新聞社 
イランのロハニ大統領(左)と首脳会談する安倍晋三首相。安倍首相はイランとのパイプ役をアピールしていた=2019年12月、首相官邸 (c)朝日新聞社
イランのロハニ大統領(左)と首脳会談する安倍晋三首相。安倍首相はイランとのパイプ役をアピールしていた=2019年12月、首相官邸 (c)朝日新聞社

 日本では正月気分も抜けきれないなか、世界では緊張が高まっている。米軍がイランの重要人物を殺害し、米国とイランの戦争の現実味が増しているのだ。「第三次世界大戦」のような大規模戦争につながりかねないとの懸念もあり、2020年はきな臭い幕開けとなった。

【この記事の写真の続きはこちら】

「もしイランが米国の人や施設を攻撃すれば、イランの52の重要施設を直ちに徹底的に攻撃する」

 トランプ米大統領は1月4日ツイッターでこう宣言した。空爆する準備は整っているとして、イラン政府に反撃しないよう圧力をかけるためだ。米大統領がツイッターで様々な相手に“脅し”をかけるのはいつものことだが、今回は深刻さが違う。

 今回の危機を理解するためには、米国とイランの長年の対立を理解しておく必要がある。1979年にイランの革命指導者ホメイニ師が親欧米だったパーレビ王政を打倒。欧米との関係が一気に悪化するなか、イランの首都・テヘランの米国大使館が過激派に占拠され、大使館員ら52人が1年以上にわたって人質となった。この事件をきっかけに米国とイランは断交し、双方に根深い不信感ができた。その後も、米国とイランはことあるごとに対立し、いまに至っている。

 トランプ大統領は今回攻撃するかもしれないとした重要施設数「52」は、人質事件の数を象徴していると説明。40年前の対立の原点がいまにつながっていることがわかる。

 40年間にわたって対立し、時には正規軍同士の局地的な戦闘もあったが、全面衝突は双方とも避けてきた。イランは人口8千万人超で、兵員数は予備役も含めれば100万人を超えるとされ、中東でも有数の軍事力を誇る。最新鋭の武器をそろえる米軍は空軍や海軍力で圧倒的に優位だが、地上戦ともなれば大きな被害が予想されるためだ。

 そのため正規軍同士の衝突はできるだけしないようにし、双方がそれぞれ支援する軍事組織が、イラクやシリアなどのイラン国外で戦ってきた。

 ところが今回は、トランプ大統領が空爆準備を宣言したように、全面衝突の危険性が高まっている。発端は、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)を殺害したこと。日本での知名度は低い人物が、イランでは国民的な英雄だ。最高指導者のハメネイ師の側近ともされ、その存在感は大きかった。

次のページ
エリート組織「コッズ部隊」を指揮し海外で工作活動