

「青春の門」で映画デビューした大竹しのぶさんと、原作者の五木寛之さんが四十数年ぶりに語り合った。表現者ふたりは、2020年に何を思うのか。
五木:これまでちゃんとお話しする機会がなかったのは不思議ですね。あなたも対談書をお出しになってるし、僕も対談はもう何十年もやってきてるんですけど。
大竹:本当にどうしてでしょう。でもこうやってお会いできて、とてもうれしいです。だって私、先生と最初にお会いしたのって……。高1のときの「青春の門」のオーディションが最初だったんです。最終オーディションだと思うんですけど、五木先生と浦山桐郎監督に面接されて、「前髪をあげてごらんなさい」と言われて(笑)。
五木:えっ、ぜんぜん記憶にないけど(笑)。
大竹:そうしたら「横顔は浅田美代子だね」と言われたんです(笑)。美代子ちゃんがちょうどすごく人気があるときで。
五木:彼女が(ドラマ「時間ですよ」で)屋根の上で歌っていたころですね。
大竹:そうです。人気もすごいし、かわいらしい方だと思っていたので、うれしくてうれしくて。あれは75年前後ですから、四十数年……え? 四十数年前? そんなになるんですか。
五木:あの映画で大竹さんが織江を演じて、いろんな賞を山ほどもらわれたのは覚えているけれど。それより僕の記憶にあるのは、筑豊のロケの現場を訪ねたときだよね。たしか青桐旅館という宿にロケ隊が泊まっていて。
大竹:青桐旅館! 田川ですよね。すごくよく覚えています。
五木:玄関を入ると、大竹さんがトントンと階段を下りてきてね、「どなた?」って。そのとき僕が大竹さんに「中学生?」と聞いたんだ。そしたらあなたがプッとふくれて、「高校生です!」と(笑)。
大竹:きちんとお話しするのはその「中学生?」以来かもしれませんね(笑)。
五木:そうだね。お互いいろいろあったけれど、なんとかここまで働いてきた。
大竹:でもぜんぜんお変わりになりません。お会いして、まずそれに本当に驚きました。
五木:いやいや、僕は87歳ですから。大竹さんこそ、変わっていない。そのちょっとはにかんだような話し方も、当時のままだよね。