先日、氷川きよしさんのコンサートに行ってきました。今年2回目の「生(なま)きよし」。言わせてください。「氷川きよしは生(なま)に限る!」。あの生歌の迫力・声量には本当に度肝を抜かれます。そして、平成の象徴として君臨し駆け抜けてきた「氷川きよし」が、令和の幕開けとともに新たな爆発を起こしている。それを「生」で観聴きできることは、ある種のありがたさすら感じます。

 夏の武道館公演を観た際、特に絶唱系の演歌を唄う姿が、幾度となくフレディ・マーキュリーと重なる瞬間がありました。「影響を受けていそう」とか「寄せている」とかではなく、期せずしてごく自然に。長年、ガチガチの様式美や常識・非常識の中で「務め」を果たし、「結果」を残してきた人だからこそ、変化や進化、抵抗や解放をする瞬間のエネルギーたるや凄まじいものがあるのだと実感。私のように端(はな)からダダ漏れな生き方を選んだ者には到底出せない生命力です。

 この20年間の「氷川きよし」は、完璧な歌い手だったと思います。生身やガチばかりが求められる世の中において、寸分の誤差も許されない枠に身を置き、勝負に勝ち続ける。これぞ究極の芸能の形ではないでしょうか。そんな人が、いざ枠からはみ出し、さらに大きく強固な世間に消費されんとする様は、どんな破天荒なロッカーよりもロックです。その覚悟と不安と悦びに、焦ることなく急かすことなく。とにかく氷川きよしは一度「生」で。そして『きよしのボヘミアン・ラプソディ』のリリースを希望します。

週刊朝日  2019年12月27日号

【週刊朝日編集部からのお知らせ】
いつも『アイドルを性(さが)せ!』をご愛読くださり、ありがとうございます。この連載は2016年5月から週刊朝日で始まりましたが、このたび書籍化して、単行本『熱視線』(本体価格1400円)として発売されました。連載の内容を大幅に加筆修正し、ミッツさんご自身が描いているアイドルの似顔絵(AERA dotでは未掲載)も収載しています。装丁にもこだわりました。毒と愛を込めて作った一冊です。ぜひ、紙の本でじっくり味わってお楽しみください!

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