――性行為が行われたとき伊藤さんの意識はなかったので同意はなかったのではないか。伊藤さんが山口さんに会った理由は仕事探しのためだった。立場的に弱い伊藤さんと性行為をするのはパワハラにもつながるのではないか。

 意識のあるなしは、事案の本質にかかわるので丁寧に答えたい。すし店でお酒を6合飲んで、伊藤さんは非常に酔っ払ってしまった。判決文でも、「強い酩酊状態にあった」と認定されています。

 最寄りの駅まで歩いていけるような状態ではありませんでした。ホテルの防犯カメラに映っている彼女の歩き方を見てもらえれば、かなり酔っ払っていることがわかります。私は歩いて駅まで行くことは難しいと判断しました。

 タクシーに同乗させたことがいいのか悪いのかと言われたら、こういうことを起こしてしまった以上、非常に悪い選択だっただろうなと今は非常に反省しています。当時の選択がベストだったかと言われれば、そうは思わない。

 酩酊状態にある人と性行為をしたことについてどう思うかという質問については、伊藤さんは自力で家に帰れないと判断し私のホテルに来てもらった。このことはいいことではなかったと反省しています。

 私の部屋に連れて行ったら、伊藤さんは部屋に入るなり嘔吐(おうと)しました。その後、私のベッドで2時間くらい寝ていました。そしてトイレに行って戻ってきて、ペットボトルの水を自分で飲んだ。その段階では伊藤さんは普通にしゃべっていて、普通に歩いていて、酔った様子はありませんでした。ですから、質問に答えるとすれば、泥酔している状態の伊藤さんと性行為が行われたわけではないので、質問自体が間違っている。

 TBSのワシントン支局長として仕事をあげるからセックスをさせろとか、そういうやり取りはいっさいありません。こういう話を伊藤さんがいる前で、またカメラの前で詳細を話すことはいいこととは思わないので、裁判資料を読んで欲しい。私が自分の立場を利用して性行為に至ったことではない。

 このように山口さんは主張し、判決を不服として控訴する方針だ。裁判の決着には、さらに時間がかかりそうだ。
(本誌・緒方麦、池田正史、多田敏男)
※週刊朝日オンライン限定記事

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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