桜を見る会を巡る騒ぎの陰で、カジノ管理委員会の5人の委員人事が国会で承認された。来年1月7日に内閣府の外局として設置される管理委は、カジノ事業者の免許をはじめ、カジノに関するあらゆる規制を運用する重要な組織だ。初代委員長は検察OBの北村道夫氏が就任する。
これでカジノ建設が本格的に動きだす。当面の焦点は、法律により3カ所と決まっているカジノ建設地の選定だ。すでに誘致表明済みの大阪府・市、横浜市、長崎県、和歌山県に加え、東京都、千葉市、名古屋市が申請を検討している。
一方、11月には、誘致申請が確実視されていた北海道の鈴木直道知事が一転見送りを表明。関係者を驚かせた。鈴木知事はカジノの旗振り役、菅義偉官房長官に近い。道の方針転換の裏には菅氏の意向があると見られている。
菅氏としては、盟友松井一郎大阪市長が率いる日本維新の会は、国会での友党として貴重な存在だから、大阪は外せない。また、安倍晋三総理のお友達、トランプ大統領の大スポンサーであるラスベガス・サンズが狙う横浜または東京のどちらかも当選確実だ。
林文子横浜市長は地元議員の菅氏忖度で8月に誘致表明に踏み切り、東京を一歩リードする。一方、小池百合子都知事は、来年7月の都知事選の前にカジノ誘致を表明すると選挙に不利なので、当面は態度保留で、選挙と五輪終了後に誘致表明に踏み切るだろう。そうなれば、一躍最有力候補となるが、東京、横浜が競合すれば共倒れもありうるので、一方だけが当選となるのではないか。
最後の1枠は、「地方再生」の観点から地方都市を外せないと考えれば、名古屋と千葉が落ちて、長崎か和歌山となる。和歌山は大阪に近すぎるが、地元選出の二階俊博自民党幹事長の影響力を考えると、依然有力かもしれない。
申請締め切りは2021年7月。その後の最終決定まで、海外のカジノ企業と自民党や各自治体を巻き込んだ壮大な利権争奪戦となる。
そんな中、12月7日のJリーグ最終節、横浜F・マリノスが優勝を決めた横浜の日産スタジアムVIPルームでは、林市長を取り囲む黒いスタジアムコートの来賓の姿が目撃されている。背中には「MELCO」の文字。香港のカジノ企業「メルコリゾーツ社」の関係者だ。実は、メルコ社は今夏からマリノスのトップスポンサー(日産を除く)に躍り出た。サンズなどの大手と対抗するため、横浜市民の歓心を買おうという必死の食い込み戦略だ。