北欧のベーシストが創りあげた癒しとスリルの57分
Tarantella / Lars Danielsson
1958年スウェーデン生まれのラーシュ・ダニエルソンは、戦後第一世代のアリルド・アンデルセンやパレ・ダニエルソンといった北欧名手をお手本として研鑽したベーシストである。80年代には母国のビッグ・バンドに在籍しながら、そこで知り合ったデイヴ・リーブマンを迎えたカルテットを結成。10年以上にわたる共演関係を続けたことによって、北欧にとどまらない舞台へと飛躍する重要なキャリアを築いた。
本作はノルウェー、ポーランド、イギリス、アメリカと、国際色豊かなミュージシャンを起用した新しいユニットによるアルバムだ。ニルス・ペッター・モルヴェル、ブッゲ・ヴェッセルトフト、アイヴィン・オールセットら旬のノルウェー勢が参加した2006年リリース作『メランジェ・ブルー』で、フューチャー・ジャズとの親和性も打ち出した実績を踏まえると、今回は新しいサウンド・コンセプトによる展開と考えていい。
チェロ+アコースティック・ギター+スモーキーなトランペットが北欧的センスの室内楽を醸し出す#1で幕を開けると、その雰囲気を保ちながらピアノ+ベース・ピチカートを中心にチェロのオーヴァーダビングが加わる#2へと進行。チェロ独奏の荘厳な響きにダニエルソンの高いスキルを再認識させられる#3、メランコリックな曲調にピアノが光る#4と、美旋律を追求する姿勢は高潔ですらあるほどだ。もちろんこれらのサウンドの中心に存在するのは、3種類の弦楽器から自在に音を奏でるダニエルソン。そして本作に最大級の貢献をするレシェク・モヂュジェールのプレイも、特筆すべきだろう。近年デュオやトリオ作でダニエルソンとのミュージシャンシップを深めており、その成果がこの新ユニットでも開花している。ピアノ+ベース+トランペット+パーカッションが無国籍的なムードを演出する即興色の濃い#5や、静かな熱狂がメンバー間で醸成されてゆくラテン・タッチの#10が、プログラムのフックとなる全13曲。癒しとスリルの57分である。
【収録曲一覧】
1. Pegasus
2. Melody On Wood
3. Traveller’s Wife
4. Traveller’s Defense
5. 1000 Ways
6. Ballet
7. Across The Sun
8. Introitus
9. Fiojo
10. Tarantella
11. Ballerina
12. The Madonna
13. Postludium
ラーシュ・ダニエルソン:Lars Danielsson(b,cello,b-vln) (allmusic.comへリンクします)
マティアス・アイク:Mathias Eick(tp)
レシェク・モヂュジェール:Leszek Mozdzer(p,celesta,harpsichord)
2008年4月スウェーデン録音