

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「ラグビー」。
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いろんな媒体で話したり書いたりしているのですが、私は高校の1年間だけラグビー部にいました。そのおかげ?か、今年のW杯のナビ番組のナレーションまでやらせて頂くことに。依頼してきた担当者も「1年間だけやってらしたそうで」と承知の上。どうなんでしょう、それ? 他に適任いるだろーよー。たったの1年だけで「やっていた」というのは恥ずかしく、ちゃんとやっていた方には申し訳ないのですが、その1年間は意外と「ちゃんと」やっていました。なんでラグビー部に入ったんだろう? 中学ではバスケ部。3年間在籍しました。強い学校ではなかったけども、まぁ真面目に取り組んで、一応レギュラーだったな。あ、副部長でしたわ。
高校に入ってから運動部に入るのは決めていました。持久力はあるほうで、どちらかというとガッチリした体格。「バスケはもうこれ以上どうにもならないだろう。高校でゼロから始めるなら、なるべくみんながヨーイドンで高校から始めるスポーツがいいな」とも思ったような気がします。現にラグビー部の新入部員で中学からの経験者は二十数名中1人で、背の高い神田くん……だったかな?
新入部員は日ごとに減りました。初日の練習後に退部を願い出る人。しばらく経ってから体力的についていけない、と申し出る人。辞めてすぐ軽音楽部に入る、よくわからない人。辞める理由はいろいろ。先輩が理不尽なコトをするわけじゃありません。優しい人が多かった。プレー中は厳しいけど。先生は怖かったな。先生の視線を感じると、思うように身体が動かなくなるくらい。
特に夏場の練習はキツかった。熱中症にもたびたびなりました。そのころはそんな言葉使ってなかったですが。1時間に1回くらい顧問の先生が「水入れやー!」(なぜか関西弁)と言うと休憩の合図。バケツにくまれた砂利まじりの水道水が最高に美味い。体力的にはついていけたと思うんですが、私はどうにもヘタクソで仕方なかった。ハンドリングが悪い。パスがとれずノックオンばかりします。せっかくボールがつながっても私が落とすとそこで水の泡。チームに迷惑がかかる。ドンドン気が滅入って練習が憂うつになっていく。ああ、思い出してきた。