

漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「リカ」(フジテレビ系 土曜23:40~)をウォッチした。
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「余暇を楽しむ大人のためにおくる本格派ドラマシリーズ」とかいう「オトナの土ドラ」枠。
しかし「絶対正義」の山口紗弥加の印象が強すぎて、やばい「オトナ女子」(穏便な言い回し)がものすごい勢いで圧迫してくるイメージしかない。
なんたって今回のヒロイン・雨宮リカ(高岡早紀)のぶっ壊れ具合も相当だ。とある病院の看護師募集の面接に現れてニッコリ。
「雨宮リカ、28歳です」
うそつけーッ! 余暇を楽しむどころじゃない、大人の高岡早紀46歳。無慈悲に顔面に寄るカメラが、その目じりの小じわをくっきりと映し出す。
「年より落ち着いて見える」と、こんな年齢詐称モロバレ女を雇ってしまう病院もかなりやばい。
外科医・大矢(小池徹平)にロックオンしたリカは、「私が運命の相手だときっとわかるはず」とドリームをゴリ押ししつつ、邪魔者を次々と排除していく。
彼女をやめさせようとした看護師長は、階段から転落して植物状態に。さらに年齢&経歴詐称を疑った後任の師長は、自殺と見せかけて殺害。
そして大矢を医療ミスで追い詰めるため、術後の患者を再び開腹、ペアン鉗子(かんし)を投入、瞬時に縫合してしまうリカ。お前はスーパードクターか。むしろリカに言ってほしい、「私、失敗しないので」。
そんな彼女の趣味はハーバリウム。これ本来は、ドライフラワーなどをガラス容器に入れ、オイルで漬けこんだ、何やらおしゃれ~なしろもの。
でもリカが漬けこんでいるのは、大矢が持っていた花束からこぼれ落ちたバラの花に、大矢の使用済み手術用手袋だ。
彼女の部屋には、なんだかよくわからないモノが漬けこまれたガラス容器が、ここは目黒寄生虫館?ていうくらい整然と並べられている。
オイルの中、ユラユラ~と揺れるゴム手袋をうっとりと見つめるリカ。
「私たち、見えない赤い糸でつながっているの」
ホラーとコントは紙一重だが、ゴム手袋とうっとりを成立させてしまう、高岡早紀46歳さすがです。
何かと漬けこむリカという女。やっぱりこりゃ20代の女じゃ無理不可能。高岡早紀の内部でじっくり漬けこまれ、醸されたオトナの狂気があってこそ。
※週刊朝日 2019年11月8日号