
グローバリズムを讃えたい顔合わせ
Quintessence / Meeting Point
ビル・エヴァンスやエグベルト・ジスモンチ等、「クインテッセンス」「ミーティング・ポイント」共にアルバム名として世に出ている言葉だが、前者がタイトルで後者がグループ名である。メンバーを確認すると、まず目に入るのがフロントの2ホーンズだ。エリック・アレキサンダーとジム・ロトンディは“ワン・フォー・オール”の同僚で、ハード・バップという共通する音楽性の絆で結ばれた関係。これだけを取っても、バンド・サウンドがある程度想像できるだろう。そこにレニー・ホワイトが加わっていることに、意外性を覚える向きがあるかもしれない。今年DVD作がリリースされた第2期RTFが象徴するように、ベテラン・フュージョン・ドラマーのイメージが定着しているホワイトの存在は一見、違和感にもつながる。さらにロシア人2名が加わった本クインテットは、有名/無名ミュージシャンが混在した顔合わせなのだ。
見逃せないのは日本では無名のロシア人がキー・メンバーであり、アメリカ勢とは共演関係を続けてここに至ったこと。しかもコレスニクの2007年個人名義作『ファイヴ・コーナーズ』がコレスニクとコンダコフの共同プロデュースで、本作のメンバー全員が参加していることを踏まえれば、ミーティング・ポイントのキー・パーソンがニューヨーカーのコレスニクであることは明らかだ。レニングラードで生まれ、米国のラジオ・ジャズ番組を聴いてベースを独学で習得し、母国を訪れた著名米国人との共演を重ねて91年に渡米。90年代をその後の展開のための助走期間としてスキルを高めた。つまり本作の成立背景に存在するミュージシャンの関係図を理解するポイントは、「アメリカへ移住したロシアン・ジャズ・ミュージシャン」。キャリアの異なる米露の5人が共通する音楽コンセプトのもとに集い、オランダのレーベルが米ニュージャージーで制作したことの興趣とグローバリズムを讃えたい。ホワイトがトニー・ウイリアムスを想起させるプレイで、本作がハード・バップに加えて60年代マイルス・デイヴィス・クインテットへのオマージュを表明しているあたりも聴きどころだ。
【収録曲一覧】
1. Secret Mission
2. Night City
3. Spoonful Of Honey
4. Spider
5. Little Lucas
6. Uno Dos Adios
7. Make Someone Happy
8. Falset
エリック・アレキサンダー:Eric Alexander(ts) (allmusic.comへリンクします)
ジム・ロトンディ:Jim Rotondi(tp,flh)
アンドレイ・コンダコフ:Andrei Kondakov(p)
ディミトリー・コレスニク:Dmitri Kolesnik(b)
レニー・ホワイト:Lenny White(ds)
2008年9月ニュージャージー録音