トランペット&アコースティック・ギターの珍しいデュオ
Chiaroscuro / Ralph Towner & Paolo Fresu
一見、異色の顔合わせとも思えるデュオ・アルバムである。レーベル設立初期からレコーディング・アーティストとなり、これがECM22枚目のリーダー作となるラルフ・タウナー。過去にこのECMでゲイリー・ピーコック、ゲイリー・バートン、ピーター・アースキン、ジョン・アバークロンビーとデュオ作を演じており、今回イタリアンのパオロ・フレスがその名簿に加わることとなった。フレスはECMの傍系レーベルWATTからの2007年カーラ・ブレイ盤『ザ・ロスト・コーズ・ファインド・パオロ・フレス』に参加。そんな前段階を経て、これがECMでの初コ・リーダー作ということになる。
2人が出会ったのは15年前のことだった。サルデ-ニャのフェスティヴァルから委嘱され、タウナーが作曲。それを演奏したアンサンブルの一員がフレスで、その初演を観たタウナーはフレスの素晴らしさに驚嘆したという。そのような伏線があって、このデュオ・レコーディングが実現したようだ。この間、フレスはBMGを始めとするレーベルからリーダー作を多数リリースし、ステージ・アップを図った。機が熟したタイミングでの制作だったと言っていいだろう。
プログラムはタウナーの新旧オリジナル曲を主体に、タウナー&フレスの即興2曲を含む全10曲。電気的に音を変化させる手法を個性とするフレスが、ここではタウナーの流儀に合わせてアコースティックに徹する。それはすなわちトランペット&フリューゲルホーンの基本的な奏法技術で“聴かせる”ことが求められるセッティング。敢えてこのハードルに挑んだフレスの心境を想像すれば、自分にとってのECM初登場という舞台が用意された以上、持てる力の最大限を発揮するしかない。そんな思いが、本作から伝わってくる。唯一のカヴァー曲#5は、かつて《ナルディス》をカヴァーしたタウナーの嗜好からすれば納得できる選曲。15年前のまだ無名だったフレスが演奏した#2を、ここで再演できたのは大きな喜びだったに違いない。トランペット&アコースティック・ギターのデュオという珍しいペアの、関係良好なデュオ作だ。
【収録曲一覧】
1. Wistful Thinking
2. Punta Giara
3. Chiaroscuro
4. Sacred Place
5. Blue In Green
6. Doubled Up
7. Zephyr
8. The Sacred Place (reprise)
9. Two Miniatures
10. Postlude
ラルフ・タウナー:Ralph Towner(ac-g) (allmusic.comへリンクします)
パオロ・フレス:Paolo Fresu(tp,flh)
2008年10月イタリア、ウディネ録音