鍵盤とトロンボーンを両立する希有な才能
Live From The Inside / Brian Culbertson
ブライアン・カルバートソンは鍵盤を主楽器に、トロンボニスト、アレンジャー、プロデューサーとして活躍するフュージョン/スムース・ジャズ界の売れっ子ミュージシャンだ。1994年のデビュー作を皮切りにアトランティック~ワーナー・ブラザーズ~GRPと、斯界のメジャー・レーベルを渡り歩いてステージ・アップ。これは通算11枚目の新作となる。
本作は通常とやや異なるCD+DVDセットだ。通例はCDがメインで、DVDがCDを補完するボーナス素材と位置づけられることが多い。その点このDVDには独自のアイデアが盛り込まれている。CD同内容の12曲に5曲が加わり、さらにリハーサル・シーンや自宅、ハイスクール、初めて吹き込んだスタジオなどカルバートソンゆかりの場所を訪れる映像が曲間に挿入。演奏とそれ以外の場面を交えた構成により、これまでのキャリアとキャラクターを浮き彫りにする。
ハリウッドのスタジオで収録された演奏は、レギュラー・バンドにホーン・セクションが加わり、曲によってゲストを迎えて進行。カルバートソンが参加/参画したエリック・マリエンサル、デイヴ・コズといった著名人気者から、若手のエリック・ダリウス、マイケル・リントンまでのゲストが、返礼としてこぞって本作に協力したミュージシャンシップが嬉しい。
新曲1曲を除いて、過去のアルバム収録曲をリメイクした選曲は、「ベスト・オブ・ブライアン・カルバートソン」の趣。新しいアレンジとフィーチャリング・アーティストを準備して、この新作に心血を注いだリーダーの気概が伝わってくる。
ジャズ/フュージョン界広しと言えども、鍵盤とトロンボーンを両立するミュージシャンは他に例がなく、そのユニークかつ豊かな才能を躍動的にとらえたのが本作なのである。マリエンサルとトロンボーンの掛け合いを演じる#1、コズ+パーカーとのアコースティック・トリオがギア・チェンジとなる#6、リントンのアルトと情感たっぷりに融合するゴスペル・フィーリングの#12。DVDメインながらCDや携帯音楽プレイヤーでも楽しみたいファンの、当然のニーズに応えた仕様を実現させたカルバートソン。その“男気”に拍手を送りたい。
【収録曲一覧】
1. Get It On
2. Always Remember
3. Do You Really Love Me?
4. Come To Me
5. Go
6. All About You
7. Hookin’ Up
8. Let’s Get Started
9. On My Mind
10. Back In The Day
11. So Good
12. Our Love
ブライアン・カルバートソン:Brian Culbertson(p,key,tb,b) (allmusic.comへリンクします)
エリック・ダリウス:Eric Darius(ts)
デイヴ・コズ:Dave Koz(ss,ts)
マイケル・リントン:Michael Lington(as,ts)
エリック・マリエンサル:Eric Marienthal(as,ts,bs)
レイ・パーカーJr.:Ray Parker Jr.(g,vo)
2009年6月ハリウッド録音