

今年最下位に沈み、明るいニュースが少なかったヤクルトだが、就任まもない高津臣吾新監督が大仕事をやってのけた。ドラフト1位で阪神、巨人と競合した石川・星稜高の右腕・奥川恭伸の当たりクジを引き当てた。
右手を突き上げてガッツポーズし、笑顔でこう呼びかけた。
「どうしてもピッチャーを強くしたいと言った手前、どうしても当てたいと思っていました。直感で当たった封筒を取ろうと思いました。ヤクルトのエースはもちろん、日本を代表するピッチャーになってほしいと思います。2日前に公言した時からスワローズのユニホームを着て、神宮で投げる姿を想像していました。一緒に頑張りましょう」
ヤクルトはくじ運に長年見放されてきた。
2007年に高校生ドラフト1巡目で5球団が競合した宮城・仙台育英高の佐藤由規(現・楽天)を引き当てて以来、競合によるドラフト1位の入札くじ引きは「9連敗」。10年は早大の斎藤佑樹(日本ハム)を外し、外れ1位でも八戸大(現・八戸学院大)の塩見貴洋(楽天)を外し、外れ外れ1位で大阪・履正社高の山田哲人を指名した。オリックスと競合したが、この時は当たりくじを引いた。
山田は球界を代表する選手に大ブレークしたため、くじを外すことが一概に不運とも言い切れないが、15年は阪神と一騎打ちになった明大の高山俊(現・阪神)の抽選で、当時の真中満監督が外れくじを「交渉権獲得」と勘違いする珍事も。今回のドラフト前も、
「ヤクルトは奥川を引き当てるイメージがない」
と報道陣の間でささやかれていたが、高津新監督は「下馬評」を覆した。
ヤクルトのウィークポイントは投手陣に尽きる。今季はリーグワーストのチーム防御率4.78。山田、バレンティン、青木宣親、村上宗隆と強力打線を擁しながら、大量失点で試合を落とすことが多かった。
特に先発の駒不足は深刻だ。
今夏の甲子園で最速154キロを記録した奥川は総合力が高く、即戦力の呼び声が高い。高卒1年目の来季から1軍で登板するチャンスは十分にあるだろう。
ただ、懸案材料も。スポーツ紙デスクは、こう分析する。
「奥川が超高校級と言われていますが、まだ18歳。1年間シーズンで投げ続けたことはないし、無理をさせると故障のリスクがある。球界を代表する投手になれる可能性を秘めているので、首脳陣の手綱さばきが重要ですね」
過去にもあり余る才能を持ちながら、故障で消えてしまった投手は少なくない。奥川をどう育てるか。ヤクルトの「育成力」が問われる。(牧忠則)
※週刊朝日オンライン限定記事
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