

ジャーナリストの田原総一朗氏は、皇室の消滅を回避するために、女系天皇の審議を引き延ばすべきではないと指摘する。
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10月22日に「即位礼正殿の儀」が行われる。
そこで、あらためて天皇について考えてみたい。日本人にとって天皇とはどういう存在なのか。
実は、私は高校生のころから疑問を持ち続けてきた。
たとえば、源頼朝は武力で日本を支配した人物だ。ヨーロッパや中国ならば、天下を取れば、自分が最高位に就く。ところが頼朝は、何の力もなく、カネもない天皇をなぜか自分の上に置いて、その天皇から「征夷大将軍」という位をもらって、天下を治めることにした。
足利尊氏は、後醍醐天皇に打ち勝ちながら、後醍醐天皇に致命傷を与えず、なんと南北朝、つまり2人の天皇を置くことになった。
徳川家康にしても、天皇から「征夷大将軍」という位をもらっている。
日本には「革命」ということは起きず、いつの時代も「維新」なのである。
太平洋戦争で日本が敗れた後、日本を占領した連合国軍のトップであったマッカーサー元帥も、昭和天皇の戦争責任を問わず、「象徴」として日本再建のために協力し合うことになった。日本人にとって、天皇がなくてはならない存在だと捉えたのであろう。
昭和天皇は、皇太子であった現上皇に、天皇の戦争責任について深く、強く述べられたはずである。現に、昭和天皇は敗戦の年の9月27日、マッカーサーと会談したときに「戦争遂行にあたって、政治、軍事両面で行われたすべての決定と行動に対する全責任を負っている」と表明されているのである。
現上皇は天皇時代に、戦争で迷惑をかけた国々を訪ねて謝罪し、激戦地をくまなく巡って、戦争の犠牲者たちに対して心を込めて鎮魂した。そして、憲法を守り、平和を堅持することに努めた。
昭和の戦争の責任について償う気持ちを固く持ち、そして平和憲法を守る。こうした上皇の強い姿勢は、新天皇も受け継いでいるに違いない。