できれば朝晩か、毎日1回はぬか床を混ぜる。これは乳酸菌などの発酵をほどよく保つために必要な手入れだ。手に付着した乳酸菌は人により違うため、ぬか床の手入れによって、人それぞれのぬか床となっていく。
ぬか床の管理には多少の手間がかかるが、「たまに忘れても大丈夫」と山田さんは話す。
「ぬか床を管理していたおばあちゃんが亡くなり、家の床下に3年くらい放置していたけれども、表面の部分を取り除いたら、また使えるようになったという男性の方もいました。乳酸菌はとても強い菌です」
ぬか床は冬に発酵速度が落ちるが、低温には強い。夏は発酵が進むので、できれば涼しいところに置いておく。ちょうどいいとされるのは20~25度ぐらい。ぬか床だけを真空パックにして冷蔵庫に保存しておくのもいい。
ぬか漬けには、さまざまな健康効果があることも魅力だ。酵素が多くあり、抗酸化作用でシミなどの原因となる活性酸素を抑制して老化防止につながるとされる。
ビタミンB1やB2なども多く、糖質の代謝を助けたり脂肪燃焼効率を向上させたりするなど疲労回復や食欲増進、消化促進といった効果もある。例えば、キュウリなどの野菜を漬けると、ビタミンB1が野菜に浸透していき、B1含有量が格段に増えるのだという。ビタミンCも豊富で美肌効果もあるほか、植物性乳酸菌が豊富なことから腸内環境を整えてくれ、悪玉菌の繁殖を抑えて善玉菌の繁殖を促すなど排便がスムーズになる。免疫力も高まり、アレルギー予防などにもつながる。植物性乳酸菌は腸内に長くとどまらないため、ぬか漬けは毎日食べることが健康にもいい。
さらに、ぬか漬けには食物繊維が豊富な上に、野菜を漬けることで野菜からも食物繊維を摂取できるため、便秘の予防にもつながる。
一方、塩分の摂取量に不安のある人もいるかもしれない。市販のぬか床でなく、自分でぬか床を作る場合は、ある程度、塩分の量をコントロールすることができる。ぬか漬けは健康的でおいしいものだが、食べすぎには注意したほうがいい。
お酒のおつまみに、ご飯のお供に、お好みの野菜などを自分で漬けてみませんか。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2019年10月25日号

