ももクロさんのプロダクションにお願いしましたところ、どんどん話が進みまして、本当のコンサート会場で撮影できることになったんです。エキストラではない、本物のファンの方が1万2千人もいらっしゃる横浜アリーナでのコンサートの最中に、撮影をさせていただきました。すごく贅沢なお話ですよね。

 最後は私たちもステージに上がって、一緒に踊るんです。映画のクランクインの前にももクロさんとお会いして、踊りの振りを教えていただきました。撮影当日も空き時間に振付師の方に確認していただきながら、練習をしました。

 1万2千人の前で踊るなんて、もちろん生まれて初めてです。天海さんはプロ。宝塚でパーンッてかっこよく階段を下りてこられた方ですからいいですけど、私が人前で踊るのは小学校の学芸会以来ですよ。

 どうなるかと不安でしたけど、会場に行ったら、もうやっちゃえって感じになって。やっているうちにだんだん楽しくなってきて。終わって大拍手を受けて天海さんに抱きつくんですけど、そこは公私混同(笑)。演技であると同時に、嬉しくて心から抱きついたともいえます。

――吉永は1959年に「朝を呼ぶ口笛」で映画デビュー。62年の「キューポラのある街」でブルーリボン賞主演女優賞を受賞し、一躍スターに。60年にわたって邦画界を牽引し、「ふしぎな岬の物語」(14)では、初めてプロデューサーも務めた。今作が出演121作目。外資の映画会社の作品はこれが初めてだ。9月3日のプレミアでは、ハリウッド式にレッドカーペットを歩き、ファンの握手、サイン、撮影攻めにもあった。

 日本の映画会社とは違って、なんというんでしょう、浪花節ではない世界を感じました。合理的にどんどん物が進んでいきます。でも逆にアメリカの本社という絶対の存在があって、そちらの方がGOと言ってくれないと進まなかったり。全体的にモダンだという感じがしました。

 ファンの方々の前を歩くのは初めて。めちゃめちゃ暑い日で、本当に大変でしたよ。でも皆さんの声を間近に聞けたのは、良い経験だったと思います。

(構成/本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2019年10月25日号より抜粋