──お笑いと介護での“舞台”に違いはありますか。
西川:めちゃくちゃありますね。みなさん介護度の度合いが違うので、決まったものをやればいいわけではないんです。施設によっては、利用者の方が「ジャイケン」自体を理解できないこともあります。「後出ししてください」と言っても何のことかわからない。一方で、普通に受け答えできて、健康維持のためにデイサービスを利用されている方もいる。だから一口に介護レクリエーションと言っても、細かく分けて考えないとできないんです。
松本:行く施設にどんな利用者がいるかは事前に聞いて、それによってやることを変えるようにしています。
──笑いの好影響を実感されることはありますか。
松本:笑うとポジティブになります。笑いをきっかけに話しだすと、昔のこともどんどん話してくれるんですね。西川君が他のことを言いだしても、まだしゃべる。昔を思い出すことによって、回想法といって頭の体操になる。笑って楽しい気持ちになってもらい、昔の記憶を語ってもらうという方向に持っていくことは意識しています。
西川:レクリエーション介護士にもいろんなジャンルがありますが、僕らは「芸人×介護」。番組MCではないですけど、引き出して話してもらうということに重点を置いています。介護レクを始めた当初は、僕らがやったことをまねしてもらうだけだったんですが、何度か経験を重ねるうちに、僕らが教えるのではなくて、教えてもらおうという姿勢に変わっていきました。
松本:介護の世界に行くと、どうしても先生っぽくなってしまうんです。そうなると壁ができて、利用者の方は心を開いてくれない。僕らが生徒なんです、という雰囲気づくりを心がけています。「あんたらそんなことも知らんのかいな」と言われる空気になるのが一番ですね。
──やりがいや喜びを感じているように思います。
松本:レク後に施設の方に「あの人、普段あんなにしゃべらないですよ」とか「あのエピソードは私も知らなかった」と言われたときは、話したいという雰囲気をつくれたんだとうれしい瞬間です。
西川:最初は「誰が来たんや」みたいな顔をしていた利用者の方々が、帰り際に握手を求めたり、わざわざ車寄せまで来て「また来てや」と言ってくれたりすると、やっていてよかったなと思いますね。
松本:4、5年前は営業しようにも、前例がないということで断られることが多かったんです。それがだんだん変わってきているように感じます。僕らはおもてなしをする立場。介護レクはサービスではなく、ホスピタリティーなんです。一人ひとりに寄り添って笑いを届けられたらうれしいです。
(本誌・秦正理)
※週刊朝日 2019年10月18日号
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