昨年9月に俳優の樹木希林さん、今年3月には父でロック歌手の内田裕也さんを相次いで亡くした、内田也哉子さん。母の命日を前に、一緒に過ごした最期の日々や幼少期からの思い出など、作家の林真理子さんがたっぷりとうかがいました。
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林:お母さまは、親しい人に「裕也とあんたの子がどうしてあんなに真っ当に育ったんだろう」って言われたそうですね。
内田:自分ではほんとにつまらない人間だと思っちゃうんです。いつも両極端な父と母の存在の中で育ってきたから、常にバランスをとろうとしちゃうんですよね。無意識のうちに中庸を望んでしまうというか。
林:だから芸能界にも興味を示さなかったんですね。
内田:そうですね。母が映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」のオカンをやるときに、母と親しかったプロデューサーの方から「也哉子ちゃん、オカンの少女時代をやりなさい」と言われて出たり(日本アカデミー賞新人俳優賞)、ときどき知り合いに誘われて出させてもらってますけど、生意気ですが、演じたいわけでなく、人生のなりゆきという感じですね。
林:そして子どものときから憧れていた穏やかな家庭をつくって幸せに暮らしているわけですね。3人のお子さんのお母さんとして。
内田:理想とはほど遠いんですけど、私が19歳、(夫の)本木(雅弘)さんが29歳で結婚したときは、それまで私は男性とおつき合いもしたことがなかったから、すべてがカルチャーショックで、理想と現実とのギャップに文句を言ってみたり、ケンカをしてみたり、けっこういろいろあったんです。話がちょっと飛んじゃいますけど、今、長男が21歳で、21歳というのは私が初めて出産をした年。そして長女は今19歳で、19歳というのは私が結婚した年。さらに次男は今9歳で、私がアメリカに1年間放り出された最初の大きな転機が9歳だったんですね。だから今、子どもを見ながら、あらためて自分のそのころを振り返ると、なんて無謀な選択をしてきたんだと思って愕然としちゃいます。