カルロス・ゴーン前会長の会社私物化疑惑に揺れる日産自動車で、西川廣人社長らの役員報酬の不正かさ上げ問題が浮上した。
「日産は八方塞がり。暗闇のなかに入っていって、悪循環に陥っています」
こう話すのは調査会社のカノラマジャパン代表の宮尾健さん。日産は主力モデル「スカイライン」で新型車を7月に発表したばかりで、9月半ばの全国一斉発売に向けて受注が好調だった。こうした前向きの動きを打ち消してしまうと懸念している。
「お客さんの足は遠退くでしょう。西川社長が続投すると株主なども日産から離れていって、株価も下がってくる可能性があります。日産は出口が見えない深刻な状況に直面しています」
西川社長をめぐる疑惑については、ゴーン前会長とともに逮捕されたグレッグ・ケリー前代表取締役が「文芸春秋」ですでに指摘していた。
ケリー被告は、西川氏が株価に連動する報酬を金銭で受け取れる権利「ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)」の行使日を2013年5月14日から22日にずらし、約4700万円を上乗せして受け取ったと指摘していた。
「西川社長は自分がいま辞めると日産の経営が立ちいかなくなると考えていて、周囲も西川社長しかいないということなのかもしれませんが、今回の問題は日産のガバナンス(企業統治)が機能していないことになります」
西川社長が続投できるところまで続けるのではとみているのが自動車評論家の国沢光宏さん。
「ゴーン前会長は後継者をつくらなかった。日産には優秀な人がいっぱいいますが、トップに立って日産を引っぱっていける人がいるのか、厳しい状況です」と解説する。
大株主がルノーの日産の場合、経営トップはルノーが承認する人材でなければならない。西川社長が続投できるところまで続け、その後はワンポイントで日産の生え抜きからトップを選び、ルノーがお手並み拝見と様子を見る可能性を国沢さんは指摘する。