文章の先生はジャズだと春樹さん。「リズム、ハーモニー、インプロビゼーション」この3つを大切にしてコンサートを組み立てていった。ライブ中盤に高橋一生さんが「夜のくもざる」などを朗読、最後は春樹さんが訳書『ジャズ・アネクドーツ』を読んだ。
「村上さんの言葉とジャズがこんなに合っているとは。ジャングルみたいに融け合っている」と京大総長の山極寿一さんが呟いた。
ライブが終わると写真撮影タイム。その光景に、僕は春樹さんがNYで観たブルースのライブを思い出した。
川上未映子さんは、「『夢みたいだな』と思ったのだけど、『いや、夢みたいだなじゃなくて、人生は夢ともいえるのだから、夢そのものなんだよな』と感じたりして、なんだかいろんなことがふっと『わかる』ような、そんな刹那の連続でした」とメールをくれた。
ごく内輪の打ち上げで、村治佳織さんがお祝いに「戦場のメリークリスマス」を弾き、奇跡の一夜が静かに更けていった。
※週刊朝日 2019年9月6日号