


葉桜も散ると、高校生の時から毎年飽きもせず「ぼくたちの失敗」がヘビーローテーションになるんです。
今年からは、この時期は森田童子祭りにしようかなと思います。
私にとって春と言えば彼女の歌の雰囲気。
移り変わりが不安で、どうしてか圧倒的に悲しくて、ふわふわした暗さが寂しくて。
別段春だからといって移り変わらなくなったのは高校生ではなくなった時からなので大分久しいのですが、私のなりたいものの一つに漠然と「大学生」というのがあります。
音楽なんか大学で習うもんじゃあないよ、と進学しなかったのですが、そういう現実的なのではなく、「ぼくたちの失敗」にあるような大学生活に憧れがあるのだと思います。
学生運動盛んな時期の下北沢とかの安アパートでドテラ的なものを着て横町には風呂屋、的な(笑)
それにしても、「近頃の若者は」なんていう言い回しは遡ること三千年も前からあるなんて言いますが、私は職業上就職活動をしたり会社に入った事がないので、世で言う類の「近頃の若者は」と言われたことがない上に、前述通り大学へも行かなかったし会社にも勤めなかったりで、物思う様になってから同年代と過ごす時間が少なかった為に、自分らの年代がどんな調子なのかがいまいち解りませんが、この「ぼくたちの失敗」の森田童子さんの学生時代にはきっと学生運動が盛んだったはずです。
で、全然詳しくはないですが世界的にスチューデント・パワーと呼ばれるような現象が激化した時代、60年代の学生運動というのはベトナム戦争に怒り、沖縄問題に怒り、学費を上げるとか、なんかそういう政策に怒っていたと認識しています。
と、いうことは、社会問題は今とさして変わってはいないような気が致します。
恐らくきちんと行進の申請をして、信号を止めて警察官が整備する中を、何やらチンドン屋風の面白バンドやサンバみたいな衣装を着た人、ジャンベを打ち鳴らす集団多数、何故かチェ・ゲバラの旗を振り回す集団多数。タクシーから見た長すぎる信号待ちの間に通った無数の人たちを見ても、一体何のデモか解りやしませんでした。学生の話からは少し反れましたが、私にはデモクラシーの意味をお祭りと間違えた人たちのように見えました。
少なくとも怒っている人たちには見えなかったのでした。
それから「ぼくたちの失敗」の歌詞中には「ジャズ喫茶」「チャーリー・パーカー」といったフレーズが出てきます。
あの時代の学生にとって、ジャズはざっくりイケてる不良の音楽だったようです。
世界に目を向けてみると、60年代というのはジャズこそ40年代のリアルタイムの大流行には陰りが出始めていたとは言え、世界中に今では伝説になったミュージシャンが大流行していました。
偏りはありますが、ジミヘン、ボブ・マーレーとウェイラーズ、カルロス・サンタナ、パーラメント、ジェフ・ベック、ジャニス等々。
彼らのカリスマ性からの影響力は推して知るべしですが、彼らに対する熱狂を差し引いて聴いた時の歌や楽器の巧さったら!一曲一曲が凝っていて、ヒット曲のイントロなんかきっと誰でも知ってるくらいキャッチーでハイクオリティ。それに巧い上に怒りに似た熱があってとんでもない事になっているわけです。
ジャズもまた、60年代になると若者が踊り狂う音楽ではなくなっていたものの、今までの概念を全て壊したフリージャズが出来てきた頃です。
マイルスやコルトレーンが当時社会情勢に怒っていたかは不明ですが、時代背景上ジャズの怒り方があの様な音に行き着くとはジャズの人は一筋縄ではゆかないな、と改めて。
当時の若者は前述では足らない世界中のスターに熱狂した訳ですが、今はどうでしょう。
今だって若者は今の世界中のスターに熱狂しているのでしょうが、問題は音です。
もちろん、エイミー・ワインハウスなど当てはまらないスターも居るのでしょうが、街中でしょっちゅう聞くような流行歌は国内外の作品問わず、なんだかシャカシャカと圧縮されて全て均一に整えられたような厚みのない電気の音が耳に障ります。
それらに傾倒している彼らは一時間と不揃いな生音を聞くに耐えられなくなっているのでは?
冒頭に書いたような今昔の怒りに対する行動の差も、音楽の話とは違えども類は遠からずで、きっと私も含む今の世代は産まれた時から不景気で、それなのに「こうあるべき」といった風潮ばかりは深く根を張っていて、型にはまりたくても、その敷かれたレールに乗りたくても乗れない情勢で、必要以上にネガティブな意味で刹那的になる。更に産まれた時からテレビには世界中の風景が映っていて、今やあんまりに多くの情報を指先だけで入手できるため、何か問題が起きた時に肯定派の意見にも否定派の意見にも納得してしまったりして、結果的に何となく画面の向こうの人事のようにしか感じなくなってしまう。
電子機器の発達など、避けられないものもありますから、きっと私もどこかでは丸っきりこの世代なのだと思います。
こうなってくると、いよいよ「近頃の若者は…」となってきてしまいます。
私が孫世代を見た時も是非「近頃の若いやつらときたら」と言わなくてはならないので、1日のうち少しだけ、アナログに戻って自分がどう考えているのかを知る事がよいのでしょう。
正しく怒るということは、昨今の音楽業界の衰退を食い止めるパワーに繋がる気が致します。
それでは、また。。[次回6/3(月)更新予定]
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