そればかりではない。近年になって、日米安保条約は日本の抑止力にはならないのではないか、という疑問が防衛専門家の間でも出るようになっている。たとえば、7月29日の毎日新聞紙上で、外務省の元国際情報局長の孫崎享氏は、「安保条約があるから米軍が守ってくれると思うのは大きな勘違い。義務はありません」と言い切っている。

 日米安保条約の第5条には「自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動する」という文言があって、孫崎氏は「米国の憲法で交戦権を持つのは議会。憲法に従うとは、議会がOKと言ったら行動するということ。日本が攻撃されたら『必ず』米軍が出てくるわけではない」と語っている。

 さらに、1971年にキッシンジャーが中国の周恩来に語った言葉を引用している。

<核の傘について言えば、(中略)日本が攻撃されたときに、我々が日本を防衛したいと思えば、防衛することができます。核の時代においては、国家がほかの国を防衛するのは条約があるからではありません。自国の国益が危機にさらされるからなのです>

 孫崎氏は、米国の核の傘があてにはならない、と言いたいのであろう。

 とすれば、日本はどうすべきなのか。自前の核兵器を持つべきなのか。残念ながら、孫崎氏はそのあたりのことは語っていない。

週刊朝日  2019年8月16日号‐23日合併号

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