ジャーナリストの田原総一朗氏は、米国の「核の傘」はあてにならないとしたうえで、日本の防衛のあり方を問いかける。
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6月末に大阪で催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議後の記者会見で、トランプ大統領が「誰かが日本を攻撃すれば、我々は全軍が全力で戦うが、米国が攻撃を受けても、日本はそうする義務はない。日米安全保障条約は不公平であり、変えなければならない」と、不満を表明した。駐留米軍経費の日本の負担増や、防衛装備品のさらなる購入を引き出すのが狙いとの見方が強く、現に、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、先月日本を訪問した際には、在日米軍の日本側負担について、現状の5倍となる巨額の支払いを突きつけていたようだ。
これに対して日本政府は、日米安保条約は第5条で米国が日本を防衛する義務を定める一方、第6条で日本は米軍基地などを提供すると定めていて、全体として「双務性」が確保されている、つまり「不公平ではない」と捉えているようだ。
安倍首相は、参院選前の党首討論会で、「米国は日本防衛義務を負っていますが、同時に、日本が基地を提供して、日本の基地があって初めて、米軍は前方展開戦略を進めることができる。アジア太平洋地域の米国の権益を、日本の基地を使って守ることができる」と、在日米軍基地は日本防衛というより、米国の世界戦略に貢献しているのだと強調した。
たしかに、ベトナム戦争やイラク戦争時など、米軍は在日基地から自由に出撃し、日本政府はまったく介入できないことになっている。
それに、2004年の米国防総省の報告書によると、日本の米軍駐留経費の負担は74.5%に上り、ヨーロッパの同盟国に比べて突出して高いことがわかる。
まだある。14年に安倍首相は、米側から「日米同盟が維持できない」と執拗に求められて、集団的自衛権の行使を認めた。その後、米側は何も言わなくなった、と説明している。
ということは、トランプ大統領は事実を知らなくて、的外れの不満を唱えているのだということになる。