そう。山口氏は、女性の弁護士に、とても態度が悪かった。嘲笑するように「何度も申し上げてますけど?」「意味がわからないんですけど」「は?」といった調子で答えることが多すぎた。人生で最も間違えてはいけない瞬間ですら、息を吐くように性差別的な振る舞いをする山口氏の迂闊(うかつ)さに、私は衝撃を受けた。ちなみに男性弁護士の反対尋問に、山口氏は気楽な感じで、むしろべらべらとしゃべりすぎていた。

 山口氏の弁護人は「普通は被害を語れない。オープンに語るあなたの目的は?」と言っていた。「議論されない限り法的システムは変わらない」と伊藤さんが答えれば、「議論じゃなくて、オープンに語るんですよね?」と半笑いな調子だった。

 性暴力は壮絶な性差別だ。行為も、その後の闘いも、性差別との闘いなのだと突きつけられた。それでも、諦めずに進み、一つひとつ扉を開けていくしかない。伊藤さんの闘いに、私も共にありたいと思う。

週刊朝日  2019年7月26日号

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