JDIは単独での生き残りは難しいと判断。中国と台湾の企業連合に最大800億円の資金を出してもらうかわりに、事実上身売りすることを4月に発表した。国産技術を守るために日の丸液晶メーカーを立ち上げたはずなのに、技術流出の恐れが高まっている。その身売りについても、一部の相手に逃げられ、実現できるか不透明だ。

 経産省の関係者はこう開き直る。

「これからのスマホに使われる有機ELパネルの開発では、韓国勢に大きくリードされてしまった。液晶についても、中国勢がJDIと大差ないほどの技術力を身につけてきています。ビジネス的な意味では、技術流出を防がなければいけないという状況ではもはやありません」

 税金を投入したのは高い技術力が前提だったはず。それが崩れるのなら、もはや税金で支援する意味はない。

 こんな状況に至った責任はどこにあるのか。

 電機業界に詳しい早稲田大学大学院経営管理研究科の長内厚教授は、歴代経営陣のマネジメント能力に疑問を呈する。

「JDIには優れた液晶技術があり、有能な人材を持つ会社でした。ところが、現INCJが送り込んだ歴代経営陣が、それを生かす能力がなかった。液晶ビジネスをきちんとわかっている人をトップにしてこなかったんです。歴代トップは、電池の専門家らが就任しており、液晶事業を行う会社としては謎の人事でした。そのため、優秀なマネジャーやエンジニアが失望してJDIを去りました」

 長内氏は、JDIが液晶から次世代の有機ELにシフトしようとしたことも失敗だったと指摘する。

「日本が育ててきた液晶技術を自ら手放して“流行り物”に乗ろうとしても韓国企業には生産規模でかないません。液晶技術は低価格なスマホや、自動車向けに活用できます。アジアやインド、アフリカなどの市場でまだまだ必要です。だからこそ、中国・台湾の企業連合はJDIに目を付けたのでしょう」

 頼みの綱だった中国・台湾の企業連合からの資金支援は、宙に浮いている。JDIによると、台湾企業のうち1社は支援を見送り、中国企業からも正式な支援決定の連絡はない。JDIは新たに香港の投資ファンドから支援を受けられるというが、先行きは不透明だ。経営危機は深刻になっており、支援先が早く決まらないと会社の存続が難しくなる。

 税金を投入した側の責任も問われる。

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