衆参ダブル選挙の声が盛り上がっている。
選挙で有権者の関心が最も高いのは、憲法でも安保・外交でもなく、景気と社会保障だ。
ところが、景気は後退局面で、米中貿易戦争により、さらなる悪化の気配も漂う。
また、少子高齢化による社会保障の危機も時が経つほど明らかになっていく。
安倍総理としては、これらの「不都合な真実」を隠したまま選挙に臨みたい。
霞が関の官僚たちもそこはよく心得て、選挙対策に協力している。
例えば、内閣府は、どんなに悪いデータが出ても、月例経済報告で「景気後退」の言葉を避けるのに必死だ。
また、今年は公的年金の持続性を検証する5年に一度の「財政検証」の年なのだが、厚生労働省はその結果の発表を遅らせている。5年前は6月初旬に発表したのに、今年はいまだに発表時期さえわからない。
これは、再計算の結果、年金財政悪化の状況が明らかになり、選挙に不利になるのを防ぐためである。
一方、総理が議長の「未来投資会議」が、企業に70歳雇用の努力義務を課す方針を打ち出し、厚労省も「健康寿命延伸プラン」を発表するなど、老後を少しでも明るく見せようという演出も熱心になされている。
そして、先週6月3日には、金融庁が「高齢社会における資産形成・管理」と題するレポートを公表し、国民に対して、老後に備えて投資しようと呼びかけた。明日の株価対策というわけではないだろうが、銀行やタンスに眠る国民の資産を何とかして株式などの投資に向けようという政策だ。金融業界のためと同時に、選挙に向けて、最近さえない株価に少しでも援護射撃できたらという意味合いも込めて打ち出された。
しかし、これが良からぬ効果を呼んでいる。
レポートは、人生100年時代では、普通の老夫婦は2千万円お金が足りなくなると警告する。だから投資で備えようと謳ったのだが、それだけでは足りないと思ったのか、少子高齢化で「年金給付水準が下がって」不足額はさらに拡大するかもしれないと「本当のこと」を言ってしまったのだ。厚労省が必死に隠しているのが水の泡だ。