

2020年東京五輪の開幕まで420日余り。世界中から東京に人が押し寄せるビッグイベントだけに予測不能なテロなど「パニック」は必至だ。
【シミュレーション】2020年7月24日の同時多発テロ想定がこちら
──暑さが少し和らいだ夕暮れ時の新国立競技場。そこからそう遠くない場所にそびえる高層ビル。「あれは何だ?」。観光客が展望フロアの窓の向こうを指さす。そこには数十機のドローンが上空で不気味に停止。その直後──。ビルに向かってぶつかっていった。激しい爆発が起こり、展望フロアは一瞬にして炎に包まれた。──
編集部が独自に作成したシミュレーションだ。
「皇居周辺の目撃情報がトラウマになっている」
警視庁関係者が声を潜めて話すのは、今月相次いで都心などの飛行禁止エリアで目撃されたドローンだ。飛ばした人物はいまだ特定されていないという。
警察当局内部でも、最悪のシナリオを想定している。毎年開催される東京マラソンでは、迎撃ドローン部隊、ジャミング(電波妨害)部隊をドローンテロ対策として配備している。
そして、まことしやかに警視庁内でささやかれているのが「狙撃作戦」だ。同庁関係者は言う。「警備部の特殊急襲部隊SATの狙撃要員を各所に配置し、不審なドローンを発見次第、狙撃するという究極のオプションも準備している」。シミュレーションのような高所でのドローン襲撃に対しては、「SAT隊員がヘリから狙撃する」という。
新国立競技場の最寄り駅での爆弾テロ。交差点への車両突入テロ。そして選手村へのゲリラ襲撃。いずれも海外では実際に起こったテロの手法である。
警視庁関係者によると、テロの標的にされるのは、警備が厳重な競技場ではない。人々が集まる一方で警備が比較的手薄な場所だ。「ソフトターゲット」と呼ばれる。
そもそも、東京五輪でテロの可能性はどれほどあるものなのだろうか。
公安調査庁で国際テロ研究に関わった、日本大学危機管理学部の安部川元伸教授が説明する。
「テロが起きる可能性はゼロではないし、未然に防ぐことは不可能と言っても過言ではない。特に、組織に属さず勝手に過激化するローンウルフ型のテロリストを事前に特定することはできない」
政府は空前の規模の警備態勢を敷く。17年4月に「セキュリティ基本戦略」を決定し、空港の水際対策やサイバー攻撃対策を強化。大会期間中は首相官邸に「セキュリティ調整センター」を設置し、24時間態勢で関連情報を集約する方針だ。テロなど重大な事態が発生したときには司令塔の機能を担う。