日本一の収益を誇る動画配信アプリ「SHOWROOM」を展開する、気鋭のIT社長・前田裕二さん。8歳で両親を失い、路上ライブ体験から、累計300万ダウンロードを超えるサービスを生み出しました。各界から注目を集める若手社長の今に、作家の林真理子さんが迫ります。
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林:今、前田さんは私たちがやっている「エンジン01」(文化人のボランティア団体)に参加していただいて、みんなの人気者ですけど、最初にいらしたとき、「あの茶髪のチャラい男の子、誰?」みたいな雰囲気がありました。
前田:はじめは「覚えてもらわなきゃ」と思ってたので、髪の色も明るくしていました(笑)。最近、映画「カメラを止めるな!」がヒットして拡散しましたけど、あれは拡散に必要な要素である「共感」と「落差」の二つが入っていたからだと思うんですね。まず、「カメラを止めるな!」は「たった300万円でつくったのにおもしろい」という落差があった。かつ、前提としてあるのは共感。つまり、自分たちの言いたいことを代弁してくれてるというのが大事で、「お金なんか使わなくても、アイデア次第でいろんなことが考えられる」というのが共感の要素ですね。この二つの要素の掛け算が拡散をもたらした。
林:なるほど……。
前田:僕自身もそうで、なんでSHOWROOMを立ち上げたかということに対して、僕は貧乏だったり、親がいなかったり、いろいろあったんですけど、「何も持ってなくても頑張れば何とかなるんだ」というのは、いま同じく何も持っていない人からすると共感してもらえる部分なのかもしれない。ただ、自分には「落差がないな」と思って。その一つとして、茶髪にしてみたんです。
林:そうか。髪の毛きちっとして、「いい青年だろ。苦労してさ」みたいな感じはイヤだったんですね。
前田:おもしろくないなと思ったんです。でも、今、もうそういう時期は過ぎたと思うので、髪をふつうにしました。もともと茶髪でいたかったわけではないので(笑)。
林 ちょっと前まで、努力した人って「ウザい」とか言われて、私が『野心のすすめ』を書いたのが6年前かな。けっこう売れたんですけど、「夢とか野心とか言われたくない」とか反発も多かったですよ。