“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、計画経済に頼る日本の市場の危うさを指摘する。
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6年前の参議院選挙は苦労した。家族4票のうち3票は固めたのだが、出馬に反対する妻・綾子が私に投票してくれるのか最後まで分からなかった。直前になって、「いいわ、あなたに入れてあげる」と言われた。これで4票は入ったと思っていたが、1年後に次男・弘が言うには、「お父さん、ごめん。投票したつもりだったけど党名を書いちゃったよ」。参院選の比例代表は、候補者にとって党名よりも名前を書いてもらったほうが有利なのだ。家族でさえ誤解するんだよな~。
資本主義とはこんなにひどいシステムはないが人類はそれ以上のシステムをいまだ発見していない、とよく言われる。多くの市場参加者が自分の利益のみを考えて行動する結果、人類にとっての資源の最適配分が達成されるというものだ。
政府がしゃしゃり出るとすれば、公害の防止や本当の弱者の支援、過大な格差の是正などのみ。大きすぎる政府は資源配分の最適化を阻害する。
資本主義の対極に位置するのが計画経済(社会主義的経済)だ。ごく少数の頭の良い人たちが計画を作り、それに沿って経済を運営する、歴史は資本主義経済(市場経済)が圧倒的に優れていたことを証明している。計画経済の代表格のソ連は崩壊し、中国の体制も変わった。
現在の日本において株式や国債の市場では、自分の損得とは関係なく行動する日銀が圧倒的な存在だ。その意味で市場経済のもとにあるとは言い難い。
4月17日の日本経済新聞は、日銀は2020年末にも日本最大の株主になるとの推計を報じた。「機関投資家・外国人が主導して発展してきた日本の資本市場は、中央銀行が主導するこれまでにない段階に入る」という。
私が金融マンだった00年までの日銀の株保有はゼロ。金融政策で株を買う中央銀行は他国にはない。国債市場はさらにひどく、日銀はいくらでも買う“モンスター”だ。