人件費は、提携葬儀屋がまるまる負担するケースが多い。寝台車同様、人件費を固定費とみなしているためだ。

 ただし、葬儀業界では不足するスタッフを派遣スタッフで補うのが一般的だ。

「直葬であっても、ご遺体のお迎えから喪主との打ち合わせ、安置、夜間待機、火葬までおおよそ25時間の稼働を要するため、2千円の時給換算で5万円程度を価格計上する」(同)という。

 おのずと、提携葬儀屋の利幅は小さくなるのだ。

 十分な利益が確保できない中、こんな事例も聞かれる。

「遺体処置はスピードが命。腐敗は不可逆的に進むので、本来ならばお客さんに確認せずに葬儀屋が判断して、腐敗の進行が速い場合にはドライアイスを増やす必要がある。一般葬が主流だった昔は十分な利益を確保できたため、この追加ドライアイスのコストを持ち出しでも吸収できたが、低価格の葬儀サービスでは、そうもいかなくなることもある」(別の葬儀関係者)

 最低限のドライアイスと利幅しか確保できないためだという。

「追加できずに『処置が不十分で、変色した、におってきた』という利用者の不満も出るようになった」(同)

 とはいえ、低価格の葬儀サービスは粗悪なところばかりではない。メリットも多く、真面目に取り組んでいるところもある。利用する場合は、以下の点に留意したい。

【納得できる葬儀をするための3ポイント】
(1)必ず詳細な見積もりを提示してもらうこと。
(2)亡くなる前から家族とどんな葬儀にするか話し合っておくこと。
(3)提示されている最低価格を鵜呑みにしないこと。火葬場の状況などにより、料金は変わることを覚えておこう。

「必ず詳細な見積もりを提示してもらうこと。それ以前に、亡くなる前から家族とどんな葬儀をやりたいか話し合っておけば、亡くなってから慌てて葬儀社を探す必要がなくなり、トラブルを回避できるでしょう。最後に注意してほしいのは、パンフレットやホームページにある最低価格を鵜呑みにしないこと。条件が異なれば、料金は必然的に変わるものです」(葬儀コンサルタントの吉川美津子氏)

 故人を気持ちよく送り出すために、ぜひ参考にしてもらいたい。(ジャーナリスト・田茂井治)

週刊朝日  2019年5月31日号より抜粋