東京オペラシティコンサートホールで京都市交響楽団が3月30日、演奏会を行った。この夜のメインの演目は「岸田繁 交響曲第二番」。ロックバンド、くるりのヴォーカリストでギタリストの岸田繁が作曲した交響曲だ。岸田もホールに訪れ、開演前と終演時にフォーマルな服装で挨拶をした。ロックミュージシャンが、なぜクラシックを手掛けたのか――。
「京都市交響楽団さんの依頼で、2017年に交響曲第一番をつくらせていただきました。そして、再び機会をもらった作品が今回の『交響曲第二番』です。僕は京都出身で、今も京都で暮らしているので、子どものころから京響の演奏は聴いていいます。攻めるというか、とてもチャレンジングなオーケストラというイメージです。2018年、シェーンベルクの『ワルシャワの生き残り』と、ベートーヴェンの『交響曲第9番』を休憩をはさまずに演奏していました。『ワルシャワの生き残り』はタイトルの通りナチスの収容所で処刑されるユダヤ人の恐怖がテーマです。一方ベートーヴェンはご承知の通りドイツの作曲家で、第九の第4楽章はあの“歓喜の歌”です。ドイツ人の残虐と歓喜を続けて演奏するというアイディアには驚かされました。そういうオーケストラだからこそ、僕に声をかけてくれたのではないかと思っています」
岸田は立命館大学産業社会学部出身。音楽大学で専門の教育を受けてきたわけではない。
「作曲は独学です。いくつもの小さなモチーフをつくり、そこから組み立てていきました。音楽の専門教育を受けていないと、どうしても時間はかかります。メソッドを知らないからです。まだ方程式を教わっていない小学生が、鶴亀算で算数の問題を解く感覚でしょうか。楽器の構造上演奏者のかたの指が届かないような流れを譜面に書いてしまったり。それでも、特に第2楽章と第3楽章は、よくできていると自負しています」
くるりのキャリアがクラシックの作曲に生きることはあったのだろうか。あるいは、クラシックを手掛けたことがくるりの音楽に影響しているのだろうか。