“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、紙幣の刷新に不安を感じていると話す。
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私は東京・四谷の雙葉の幼稚園出身だ。皇后も在学された雙葉は女子の名門だが、幼稚園だけ男子4人の入学が許される(当時)。女子はそのまま小学校へ進学し、男子だけが外に出される。男子4人にとって、女子26人に囲まれた時代だった。2クラスで男子は計8人で、私は伊藤君や岩倉君をいじめたことがあった。50歳のときの同窓会で初めて知ったのだが、岩倉君は岩倉具視の、伊藤君は伊藤博文のひ孫。先祖が紙幣の肖像になる方たちだったのだ。というわけで、「世が世なら大変なことになっていた~」とつくづく思ったものである。
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日本のキャッシュレス化は世界に比べて非常に遅れている。政府もやっと重い腰を上げて、キャッシュレス化を進めようとしている。中国人を先頭に進んだ国々から来る外国人旅行客をとりこむためとか、現金を取り扱うコストと時間を削るためとか、いろんな理由が挙げられている。
たしかに商店主らが毎日、銀行に出向いて小銭を預金したり、両替をしたりする労力は馬鹿にならない。私も年末に銀行窓口で長時間待たされ、へきえきした。日本銀行が現金取り扱いの事務にかけるコストも膨大だ。
しかし、キャッシュレス化を進める最大の理由は、日銀が政府の「紙幣印刷所」に過ぎない現在の位置から、本来の中央銀行としての機能を取り戻すためだと思っている。正確に言うと、日銀は紙幣を直接刷るのではなく、国立印刷局に刷ってもらい、それを引き受けて発行しているのだが。
だから、キャッシュレス化は非常に重要だとの内容を、いつかこのコラムで書こうと思っていた。その矢先、4月9日、突然、紙幣の刷新が発表された。2千円札はそのままに、1万円札、5千円札、千円札のデザインを一新するというのだ。
エ、エ、エ? キャッシュレス化を進めるなら、1万円札、5千円札の発行を中止したほうがいいと、私はかねて主張してきた。なぜ、いまこのタイミングで新紙幣の発表なのか。ハイパーインフレで円の信頼性が暴落したときの準備を、政府が始めたのではないかと私は勘ぐってしまう。