ネットは、どこかの国や国際機関が単独で管理しているものではない。参加者が自由かつオープンに接続し、機能的な相互扶助の関係が形成されていく中で、自然と構築されていったものだ。だからこそ、国家や国境に縛られることなく自由につながり、統制が困難だった。

 それに対し、ネットを分割すれば強力な情報統制が可能になるというのが、インターネット主権、サイバー主権の基本的な考え方だ。

 もちろん、ネットは米国を中心に発展してきたこともあり、米国への依存度が高いことも事実。ロシアなどの国々がその状況を安全保障上の脅威と捉え、自国の独立性を確保したい背景にはそうした事情もある。

 だが、それが国家によるネットの監視や検閲、つまり独裁的な情報統制を正当化する口実となっている。多くの国がロシアの動きに追随すれば、世界中のネットが「中国化」する。その日は、それほど遠くない未来の話なのかもしれない。

週刊朝日  2019年4月5日号