カンヴァセイションズ・ウィズ・クリスチャン/クリスチャン・マクブライド
カンヴァセイションズ・ウィズ・クリスチャン/クリスチャン・マクブライド
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聴きどころ満載の初デュオ集
Conversations With Christian / Christian McBride

「2ヶ月も間を空けずにリリースされた2枚の対照的なCDは、人気ジャズ・ベーシスト、クリスチャン・マクブライドの多才ぶりを示している」。本作の発売元である米Mack Avenueのホームページには、このような説明がアップされ、意図的なリリース・スケジュールであることを公表した。

 実はその1枚目の作品を「イチオシ」の候補に仕分けしていたのだが、そうこうするうちに2枚目の本作が登場。そこで今回は後者をメインとしつつ、前者にも触れる形で進めたい。9月リリースの『The Good Feeling』はクリスチャンにとって初めてのビッグバンド作となった。いつかBBに取り組みたいと思っていたクリスチャンを透視するかのように、95年にウィントン・マルサリスが提案。ずいぶんと長い時間がかかったが、編曲を仕上げ、ニコラス・ペイトン(tp)、ダグラス・パーヴァイアンス(tb)、ロン・ブレイク(ts,ss)らの協力を得て、スタンダード&オリジナル曲集を完成させた。自他共に認める代表曲「ザ・シェイド・オブ・ザ・シダー・ツリー」の拡大ヴァージョンが嬉しい。10月下旬には新作2タイトルとは別のプロジェクトである5人編成の“インサイド・ストレート”を率いて来日しており、クリスチャンの多彩な活動がクローズアップされる状況での新作リリースということになる。

 2009年、クリスチャンに願ってもない企画が届く。自身の名前を冠したゲストとのトーク&セッションのラジオ番組がスタート。好反響を呼んだことが、本作実現の後押しとなったのだ。共演したいミュ-ジシャンとのスケジュール調整とレコーディングの設定や、各所属レコード会社からの許諾に時間がかかったため、完成までに約2年間を要した。

 全13曲、13人のパートナーの内訳は、ピアニスト5曲、ヴォーカリスト4曲、その他が4曲。ピアニストではまず2名の故人に目が向く。初共演はクリスチャンが19歳の時だったというハンク・ジョーンズとの#8は、ピアノ&ベース・デュオのお手本のような演奏。クリスチャンが入ったザ・グレイト・ジャズ・トリオの作品を1枚でも残してくれていたらよかったのに、と思う。昨年12月に逝去したビリー・テイラーとの#6では、アルコ・ベースとピチカートの併用でジャズ界の顔役と魂の交流を記録。チック・コリアとの#10は本作中最長の9分超にわたって繰り広げられる、スリリングな完全即興演奏だ。大地を揺るがすベース音とアンジェリーク・キジョ-の歌声が共鳴する#1や、クリスチャンのソウル・ミュージック好きを明らかにするブリッジウォーター参加の#7のヴォーカル曲も魅力。聴きどころ満載の初デュオ集だ。

【収録曲一覧】
1. Afirika
2. Fat Bach And Greens
3. Consider Me Gone
4. Guajeo Y Tumbao
5. Baubles, Bangles And Beads
6. Spiritual
7. It’s Your Thing
8. Alone Together
9. McDukey Blues
10. Tango Improvisation #1
11. Sister Rosa
12. Shake ‘N Blake
13. Chitlins And Gefiltefish

クリスチャン・マクブライド:Christian McBride(b)
ハンク・ジョーンズ:Hank Jones(p)
チック・コリア:Chick Corea(p)
ロイ・ハーグローヴ:Roy Hargrove(tp)
ディー・ディー・ブリッジウォーター:Dee Dee Bridgewater(vo)

2011年作品

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