サウンド・トラヴェルズ/ジャック・ディジョネット
サウンド・トラヴェルズ/ジャック・ディジョネット
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話題の新興レーベルからの初リリース
Sound Travels / Jack DeJohnette

 2012年度《NEA ジャズ・マスターズ賞》の受賞者5名のうちの1人がジャック・ディジョネットだ。今月10日にはNYジャズ・アット・リンカーン・センターで授章式と記念コンサートが開催され、ディジョネットは同時受賞者のシーラ・ジョーダン、ジミー・オウエンスと共演した。

 近年の活動としては、1983年以来ピアノ・トリオ界のトップを走り続けているキース・ジャレット“スタンダーズ”が、来年いよいよ結成30周年を迎えるので、これまでにも増して要注目。リーダー作は2009年リリースの前作『Music We Are』が、ウェイン・ショーター4のメンバーであるダニーロ・ペレス(p)+ジョン・パティトゥッチ(b)とのトリオによるCD+DVDで、編成とソフトの両面で話題を呼んだのが記憶に新しい。

 この新作はディジョネットのどの過去作とも異なるコンセプトでレコーディングされたように思える。全9曲はすべてディジョネットが書き、1つとして同じ顔ぶれの編成にしていない。ピアノ&ベル独奏の#1で幕を開け、自身の多重録音や2管、ヴォーカル入りのナンバーで繋ぎながら最後は自身のピアノ独奏で完結。メッセージ性を帯びた構成とアルバム・タイトルから、ディジョネットの意欲が伝わってくる。

 聴きどころは多数、用意されている。グラミー賞新人賞の受賞でステージ・アップしたエスペランサ・スポルディングを6曲で起用した、アコースティック&エレクトリック・ベース+ヴォーカルのフル活用は、作品をアピールする要素としても効果的。トランペット+ギター+ティンバレスのユニゾン・テーマによる#2では、ハミング&スキャットで華を添える。アンブローズ・アキンムシーレのトランペットとティム・リーズのサックスの2管編成では、デイヴ・リーブマンを想起させるソプラノが激しいモーダルな#4と、大らかなカリプソ調の#5の、対照的な2曲が並ぶ。ディジョネットの自作曲の再演も収録されており、『パラレル・レアリティーズ』からの#8ではジェイソン・モラン(p)+エスペランサ+ディジョネットという興味深いリズム隊を編成。ゲイトウェイ・トリオ(ECM)の#7はボビー・マクファーリンのヴォーカル+自身のピアノ+パーカッションの3人で、オーガニックなサウンドに仕上がっている。ジャズ・トリオ作『Camp Meeting』に協力した返礼かのように、ブルース・ホーンズビーが本業のヴォーカリストとして参加した#3は、異色のトラックだ。今年の8月9日に70歳の節目を控えたディジョネットの、話題の新興レーベル eOne Musicからの初リリースである。

【収録曲一覧】
1. Enter Here
2. Salsa For Luisito
3. Dirty Ground
4. New Muse
5. Sonny Light
6. Sound Travels
7. Oneness
8. Indigo Dreamscapes
9. Home

ジャック・ディジョネット:Jack DeJohnette(ds,p,vo)
ティム・リーズ:Tim Ries(ts,ss)
アンブローズ・アキンムシーレ:Ambrose Akinmusire(tp)
リオーネル・ルエケ:Lionel Loueke(g)
エスペランサ・スポルディング:Esperanza Spalding(b,vo)

2011年作品