

[撮影/馬場道浩、ヘア&メイク/筒井智美(PSYCHE)、スタイリング/馬場順子、アートディレクション/福島源之助+FROG KING STUDIO、衣装協力=BRUNELLO CUCINELLI、Cartier]
2015年、米演劇界で最も栄誉のあるトニー賞で4部門を受賞したミュージカル「王様と私」が、この夏、日本で上演される。初演当時、渡辺謙さんは55歳でミュージカル初挑戦、しかも全編英語。なぜ、踏み出せたのか。
「大切なのは、これまでやってきたことをどこまでちゃんとできるか。もちろん表現方法の違いや、言葉の問題もある。でもそれは、ギアを変えるということではなく、ちょっとしたアクセルワークやブレーキを調整するようなもの。とくに今は、できるだけ自分が心地よくいられる環境を作り、どこに行ってもそこで最大限のパフォーマンスができるようにすることに、注力しています」
一方で、時代の変化や気分は、ビビッドに感じ取る。
「舞台は今のお客さんに見せるものですから。ラーメンと同じで、季節や環境に合わせて、ちょっとずつでも味を変えていかないとおいしいものはできない。実際に台詞や演出を変えるということではなく、世の中の気分を背中で受け止めることが大事だと思います」
自分を規定したくないから、ここ10年くらいは、あえて目標を作らない。
「楽しいことはいっぱいありますが、一番アドレナリンが出るのは仕事」
そう語る渡辺謙の挑戦は、おそらくまだまだ終わらない。(本誌・野村美絵)
※週刊朝日 2019年3月15日号