成年後見制度を申し立てた動機と原因 (週刊朝日 2019年3月15日号より)
成年後見制度を申し立てた動機と原因 (週刊朝日 2019年3月15日号より)
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成年後見制度のメリットとデメリット (週刊朝日 2019年3月15日号より)
成年後見制度のメリットとデメリット (週刊朝日 2019年3月15日号より)
家族信託のしくみ(父が子に任せるケース) (週刊朝日 2019年3月15日号より)
家族信託のしくみ(父が子に任せるケース) (週刊朝日 2019年3月15日号より)

 親の介護や相続に直面した人の多くが聞く、「成年後見制度の利用を」との言葉。ただ、実際に使うと「こんなはずじゃなかった」と感じることも多い。「70歳をすぎた親が元気なうちに読んでおく本」などの著書があるフリーライターの永峰英太郎氏が、父の成年後見人となり、最初はホッとし、のちに大きく後悔した体験談をお伝えする。

【図表】成年後見制度のメリットとデメリット

*  *  *

 2013年秋、母が末期がんだとわかり、母から父の認知症についても知らされた。翌14年1月には母が危篤状態に陥り、父は腰の圧迫骨折で倒れて入院。そのとき私に突然襲いかかってきたこと、それが「お金の問題」だった。

 親の入院費や生活費、葬式費、父の介護施設への入所費……。これらを工面する必要があるのに、親の預金口座の暗証番号がわからず、お金をおろせない。それらの費用を自分の預貯金から切り崩す事態に陥った。

 14年2月、母が息を引き取った後も、お金の問題は私の生活に立ちはだかる。父の認知症が理由となり、母の預貯金を相続できなくなったのだ。

 金融機関への提出書類は相続人それぞれの署名が必要だが、父は署名できなかった。銀行に問い合わせると、案の定、「相続人の署名は必須」との回答。ただ、続けて「成年後見人を立てれば、相続できます」という言葉も返ってきた。

 すぐ専門書を買って調べると、「子ども自身が成年後見人になれる」「親の預貯金を自由におろせる」などと書かれていた。成年後見人になれば、私の直面するお金の問題はすべて解決できる──。そう確信し、私は成年後見人になると決意したのだった。

 その結果、お金の問題はすべて解決でき、「よかったね」と多くの人が喜んでくれた。しかし、私の思いは違った。「成年後見人にならなければよかった」。そう後悔の念を抱き続けることになったのである。

 認知症になると判断能力が低下し、預貯金の管理や各種契約が難しくなる。家庭裁判所の監督のもと、こうした人を支援するのが成年後見制度だ。「後見」「保佐」「補助」の三つにわかれ、判断能力の程度でいずれかになる。認知症がある程度進んでいる場合、財産に関するすべての法律行為を代理できる後見を選ぶことになる。その人を支えるのが成年後見人だ。

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