借り手に有利な条件で融資し、さらに返済資金の一部も出してあげるとはずいぶんと気前のいい話だ。政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授はこう指摘する。

「いずれの巨額融資も、危機的状況に陥った自民党を支えるためのものと言える。返済されないかもしれない貸し出しだからこそ、銀行団として協調して融資したのだろう。銀行側は融資と引き換えに自分たちに有利な政策を自民党に期待できる。持ちつ持たれつの関係だ」

 自民党が政権に復帰できず弱体化すれば、融資が焦げ付くリスクが高まる。回避するには、自民党をずっと支えるしかない。もし融資を拒否すれば、政権からにらまれる恐れもある。銀行は政府から様々な規制を受けており、政権と対立するのは絶対に避けたい。本来銀行より立場が弱いはずの借り手が強気に出られるのは、こうした背景もある。

 野党でも借金をしてきたところはあるが、規模では自民党が突出している。

 昨年11月に公表された各政党本部の政治資金収支報告書によると、17年末時点で銀行からの借り入れが残っている政党は、自民党と日本維新の会のみ。日本維新の会は17年10月にりそな銀行から4億円を借り入れ、そのうち3億円の返済が残っている。

 自民党の財政が再建できたのは、政党交付金のおかげだともいえる。総務省は自民党を含む8政党から、2019年分の政党交付金の申請があったと1月17日に発表した。交付額は1月1日時点で政党に所属する国会議員数と、直近の衆院選と過去2回の参院選の得票数をもとに決まる。総額は約317億円で、そのうち約178億円が自民党に配分されるとみられる。17年の約176億円を上回り過去最多となりそうだ。

 野党の見込み額は国民民主党が約54億円、立憲民主党が約32億円などとなっており、自民党の資金力は大きい。

 政党交付金は、もちろん私たちの税金が出どころだ。国民1人あたり250円の負担をしている。

 自民党の使途報告書によると、交付金は銀行への返済には直接使われていないことになっている。だが、全体的に見ると、交付金のおかげで全額返済できるまでに、資金力が回復した格好だ。

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